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親知らず抜歯の痛みは?手術前に知っておくべきポイントまとめ
「親知らず、抜いたほうがいい?」「手術はやっぱり痛いのかな…」多くの方が一度は抱えるこの不安。放置すれば将来の虫歯や歯並びの悪化につながるかもしれないと聞き、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、抜歯の判断基準、手術当日の流れ、そして「ドライソケット」を防ぐ術後の過ごし方まで、気になる疑問を徹底解説。不安を安心に変え、納得して治療に臨むための一歩を踏み出しましょう。
親知らずを抜くべき?判断基準と抜歯前に知るべき重要ポイント5つ
「親知らず、抜いたほうがいいのかな?」 「抜くとしたら、やっぱり痛いんだろうか…?」
多くの方が、親知らずのことで一度は悩んだことがあるかもしれません。 親知らずは、必ずしも抜かなければならない歯ではありません。 しかし、放置することで、将来さまざまな口のトラブルの原因になることも事実です。
この記事では、抜歯への不安を少しでも和らげられるように、 ご自身が納得して治療を選べるようになるための重要ポイントを解説します。 まずは、抜歯の判断基準や事前に知っておくべきことを5つに分けて見ていきましょう。
抜歯が必要な親知らず・残せる親知らずの見分け方
すべての親知らずを抜く必要はありません。 他の歯と同じように、問題なく噛めて、しっかり磨けているなら、 無理に抜かずに、大切な自分の歯として残しておくことも可能です。
どのような場合に抜歯が必要になるのか、また残せるのか、 まずはご自身の状況と照らし合わせてみましょう。
【残せる可能性のある親知らず】
- まっすぐに生えていて、上下の歯でしっかり噛み合っている
- 歯ブラシがすみずみまで届き、虫歯や歯周病なく清潔に保てている
- 手前の歯を押したり、歯並び全体に悪い影響を与えたりしていない
【抜歯を考えたほうが良い親知らずのサイン】 以下の項目に一つでも当てはまる場合は、 一度、歯科医師に相談することをおすすめします。
- □ 親知らず自体が虫歯になっている
- □ 親知らずが原因で、大切な隣の歯まで虫歯になっている
- □ 歯ぐきが何度も腫れたり、ズキズキ痛んだりする(智歯周囲炎)
- □ 斜めや横向きに生えていて、歯と歯ぐきの間に食べ物が詰まりやすい
- □ 親知らずが手前の歯を押し、全体の歯並びを乱す可能性がある
- □ 歯ブラシが届きにくく、自分ではきちんと磨けない
- □ レントゲンで、嚢胞(のうほう)など病気の原因になっていると指摘された
最終的な判断は、レントゲン撮影などで歯の向きや根の状態、 あごの骨の状態を詳しく調べてからになります。 気になる症状があれば、まずはかかりつけの歯科医院で診てもらいましょう。
親知らずの放置が引き起こすリスク|歯並びの悪化や虫歯
「今は特に痛くないから大丈夫」と親知らずをそのままにしておくと、 将来的にさまざまな口のトラブルを引き起こす可能性があります。 具体的にどのようなリスクがあるのかを知っておくことが大切です。
- 虫歯・歯周病 親知らずは一番奥に生えているため、歯ブラシが届きにくい場所です。 そのため、汚れがたまりやすく、虫歯菌のすみかになりがちです。 親知らず自体が虫歯になるだけでなく、一番大切な隣の歯(第二大臼歯)まで 虫歯や歯周病にしてしまうリスクが高まります。
- 智歯周囲炎(ちししゅういえん) 親知らずの周りの歯ぐきが、細菌に感染して炎症を起こす病気です。 疲れやストレスで体の抵抗力が落ちた時に、急に歯ぐきが腫れたり、 強い痛みが出たり、膿が出たりします。 ひどくなると口が開きにくくなることもあります。
- 歯並びへの影響 斜めや横向きに生えた親知らずは、じわじわと手前の歯を押し続けます。 この力が、前歯の歯並びがガタガタになる原因になることがあります。 矯正治療を考えている場合、先に親知らずの抜歯をすすめられることも多いです。
- 嚢胞(のうほう)や腫瘍 頻度は高くありませんが、骨の中に埋まった親知らずの周りに、 液体がたまった袋状の病変(嚢胞)ができることがあります。 この嚢胞は、自覚症状がないままゆっくりと大きくなり、 周りのあごの骨を溶かしてしまうことがある、注意が必要な病気です。
これらのリスクを避けるためにも、歯科医師とよく相談し、 適切な時期に抜歯を検討することが重要になります。
親知らずの生え方(まっすぐ・斜め・埋伏)による抜歯方法と難易度
親知らずの抜歯は、その生え方によって方法や難しさが大きく異なります。 歯科医院では、レントゲンやCTで歯の向き、根の形、骨との関係をしっかり確認し、 一人ひとりに合わせた安全な抜歯計画を立てます。
生え方 | 特徴 | 抜歯の難易度 | 抜歯方法の概要 |
---|---|---|---|
まっすぐ | 正常にまっすぐ生えている状態。 | 低い | 通常の歯と同じように、比較的短い時間で抜けることが多いです。 |
斜め | 斜めに傾き、一部が歯ぐきに埋まっています。 | 中程度 | 歯ぐきを少し切開したり、歯をいくつかに分けてから取り出すことがあります。 |
水平埋伏 | 完全に横向きで、歯ぐきや骨の中に埋まっています。 | 高い | 歯ぐきを切り開き、歯を覆う骨を少し削って、歯を分割して取り出す処置が必要です。 |
特に、完全に横向きで埋まっている「水平埋伏」のような難しい抜歯では、 歯を取り出すために、周りの骨を少し削る必要があります。 歯科医師は、この骨を削る量をできるだけ少なくし、 患者さんの体への負担を減らすための工夫を常に考えています。
抜歯費用はいくら?保険適用と医療費控除の対象について
親知らずの抜歯にかかる費用は、多くの方が気になるポイントだと思います。 親知らずの抜歯は、虫歯や歯周病の予防・治療の一環と見なされるため、 基本的に健康保険が適用されます。 費用は、親知らずの生え方や抜歯の難しさによって変わります。
【費用の目安(3割負担の場合)】 費用は、抜歯処置そのものにかかる料金です。 この他に、初診料や再診料、レントゲン・CT撮影料(約1,500円~4,000円)、 お薬代などが別途必要になります。
生え方・状態 | 費用の目安(3割負担) |
---|---|
まっすぐに生えている場合 | 約1,500円~3,500円 |
斜めや一部埋まっている場合 | 約3,500円~5,000円 |
完全に埋まっている(埋伏歯)場合 | 約4,000円~7,000円 |
【医療費控除について】 親知らずの抜歯にかかった費用は、医療費控除の対象となります。 医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費の合計が 一定額を超えた場合に、確定申告をすることで所得税の一部が戻ってくる制度です。 ご自身だけでなく、生計を共にするご家族の医療費も合算できます。 抜歯の際の領収書は、なくさないように大切に保管しておきましょう。
親知らず抜歯の手術当日|流れと痛みを抑えるためのポイント4選
「いよいよ親知らずを抜く日になったけど、何をするんだろう…」 「手術って聞くとやっぱり怖いな」
手術当日は、さまざまな不安でいっぱいになるかもしれません。 しかし、当日の流れや痛みを抑えるためのポイントを事前に知ることで、 心の準備ができ、落ち着いて抜歯に臨むことができます。
ここでは、手術当日の流れから、痛みをできるだけ少なくするための工夫、 そして抜歯後の処置まで、皆さんが気になるポイントを 4つに分けて詳しく解説していきます。
問診から抜歯までの流れと手術時間の目安
親知らずの抜歯は、来院してすぐに歯を抜き始めるわけではありません。 安全に手術を行うために、いくつかのステップを踏んで進められます。 当日の大まかな流れと、手術にかかる時間の目安を知っておきましょう。
【抜歯当日の基本的な流れ】
- 問診・体調確認 現在の体調や、飲んでいるお薬、アレルギーの有無などを改めて確認します。 緊張すると血圧が上がることがあるため、正直にお伝えください。 安全な手術のために、とても大切なステップです。
- レントゲン・CT撮影 事前に撮影済みの場合でも、当日の最終確認として撮影することがあります。 親知らずの正確な位置、根の形、大切な神経や血管との距離などを 精密に調べ、手術のシミュレーションを行います。
- 治療計画の最終確認 撮影した画像をもとに、歯科医師が抜歯の方法や手順を再度説明します。 考えられるリスクや、手術後の過ごし方などもお話しします。 わからないことや不安なことがあれば、遠慮なくこの時点で質問してください。
- 麻酔 抜歯する部分に麻酔をします。 痛みをできるだけ感じないように、さまざまな工夫がされています。 詳しくは次の項目で解説します。
- 抜歯 麻酔が十分に効いていることを、器具で触ってしっかり確認してから、 抜歯を開始します。手術中は痛みを感じることはほとんどありません。
- 縫合・止血 抜歯した後の穴(抜歯窩)をきれいにし、必要に応じて縫い合わせます。 清潔なガーゼを噛んでいただき、血が止まるのを待ちます。
- 術後の説明 抜歯後の注意点や、処方されるお薬(痛み止めや抗生物質)の 飲み方について説明を受けます。
【手術時間の目安】 抜歯にかかる時間は、親知らずの生え方によって大きく異なります。 これは、歯を取り出すための処置の複雑さが違うためです。
親知らずの生え方 | 手術時間の目安 | 特徴 |
---|---|---|
まっすぐ生えている | 10分~30分程度 | 比較的スムーズに抜けることが多いです。 |
斜めに生えている | 20分~40分程度 | 歯ぐきを少し切ったり、歯をいくつかに分けてから取り出すことがあります。 |
完全に埋まっている | 30分~60分程度 | 歯ぐきを切り開き、歯を覆う骨を少し削るなど、複雑な処置が必要になります。 |
これらの時間はあくまで目安です。 患者さん一人ひとりのお口の状態によって時間は前後します。
痛みを最小限にする麻酔の種類と注射時の工夫
「抜歯で一番怖いのは麻酔の注射」と感じる方は少なくありません。 歯科医院では、その注射の痛みをできるだけ和らげるために、 段階的な麻酔や器具の工夫を行っています。
【痛みを抑える麻酔の種類】
- 表面麻酔 注射をする部分の歯ぐきに、ゼリー状やスプレー式の麻酔薬を塗る方法です。 歯ぐきの表面の感覚を鈍らせることで、 注射針が刺さる「チクッ」とした痛みを軽減します。
- 浸潤麻酔 抜歯の際に主に行われる麻酔です。 歯の周りの歯ぐきに麻酔薬を注射し、 歯やその周りの骨に麻酔をじわじわと浸透させます。
- 伝達麻酔 下あごの親知らずなど、骨が硬く麻酔が効きにくい場所で使われる方法です。 あごの奥にある太い神経の根元に麻酔薬を効かせることで、 広範囲の感覚をしっかりと麻痺させることができます。
【注射の痛みを和らげる工夫】
- 極細の注射針の使用 注射針は細ければ細いほど、皮膚や粘膜を通過するときの抵抗が少なく、 刺すときの痛みが軽減されます。現在では非常に細い針が開発されています。
- 麻酔液を人肌に温める 冷たい麻酔液が体内に入ると、その温度差が刺激となって痛みを感じやすくなります。 あらかじめ麻酔液を体温と同じくらいに温めておくことで、刺激を和らげます。
これらの工夫により、多くの場合、麻酔時の痛みはかなり抑えることが可能です。
抜歯後の縫合は必要?
抜歯が終わった後、傷口を糸で縫い合わせることがあります。 これを「縫合(ほうごう)」と呼びます。 縫合の目的や、使われる糸の種類について知っておきましょう。
【縫合する目的】
- 止血 切開した歯ぐきからの出血をしっかり抑えます。
- 傷口の保護 食べ物のカスなどが傷口に入るのを防ぎ、ばい菌による感染のリスクを減らします。
- 治癒の促進 開いた歯ぐきを寄せて閉じることで、傷の治りを早めます。
特に、歯ぐきを切開したり、骨を削ったりした複雑な抜歯では、 傷口を安定させるために縫合が必要になるケースがほとんどです。 一方、まっすぐ生えている親知らずを簡単に抜いた場合など、 傷が小さければ縫合しないこともあります。
抜歯後の生活で注意すべき6つのこと|痛み・腫れの対処法から食事まで
親知らずの抜歯、お疲れさまでした。 処置が無事に終わりホッとする一方で、 「これから痛くなるのかな」「ごはんは食べられるの?」など、 抜歯後の生活に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
手術後の数日間は、痛みや腫れをできるだけ抑え、 傷口がスムーズに治るように過ごすことがとても大切です。 この期間の過ごし方が、その後の回復を大きく左右します。
ここでは、抜歯後の生活で特に注意していただきたい6つのポイントを、 具体的な対処法とともに詳しく解説します。 このポイントを押さえて、安心してダウンタイムを乗り切りましょう。
痛みのピークはいつまで?痛み止めが効かない時の対処法
抜歯後の痛みは、多くの方が最も心配されることだと思います。 痛みの感じ方には個人差がありますが、一般的な経過を知っておきましょう。
痛みのピークは、麻酔が切れてから抜歯後24時間〜48時間、 つまり手術の当日夜から翌々日にかけてやってくることが多いです。 この期間は、処方された痛み止めを上手に使うことが鍵になります。
【痛み止めの効果的な使い方】 痛み止めは、痛みが我慢できなくなってから飲むのではありません。 「痛くなりそうだな」「少し痛くなってきたな」と感じたタイミングで、 早めに飲むのが最も効果的です。 痛みの原因物質が本格的に作られる前に抑えることができるからです。 歯科医師の指示通りの時間や回数を守って、きちんと服用してください。
腫れを早く引かせるための冷却方法と注意点
抜歯後の腫れは、体が傷を治そうとしている正常な反応の一つです。 特に下の親知らずや、骨を削るなど複雑な抜歯だった場合に起こりやすく、 驚かれる方もいますが、心配しすぎる必要はありません。
【腫れのピークと期間】 腫れのピークは、痛みのピークより少し遅れてやってきます。 抜歯後48時間〜72時間(2〜3日後)ごろに最も腫れることが多く、 その後は1週間ほどかけて、ゆっくりと引いていきます。 また、内出血によって頬が黄色や紫色になることもありますが、 これも自然に吸収されて消えていきますのでご安心ください。
抜歯当日から食べられる食事と具体的なメニュー例
抜歯後は、傷口を刺激せず、栄養をしっかり摂ることが回復への近道です。 抜歯当日から食べられるもの、避けたほうが良いものを知っておきましょう。
【食事の基本ルール】
- 麻酔が完全に切れるまでは食事を控える (感覚がないため頬や唇を噛んでしまう危険があります)
- 抜歯した側とは反対の歯で、ゆっくり噛む
- 熱すぎるもの、硬いもの、刺激の強いものは避ける (血行を良くしたり、傷口を直接刺激したりするため)
【おすすめの食事と具体的なメニュー】 口を大きく開けなくても食べられる、柔らかくて栄養のあるものがおすすめです。
種類 | おすすめのメニュー例 |
---|---|
主食 | おかゆ、雑炊、柔らかく煮込んだうどん、パン粥 |
主菜・副菜 | 茶碗蒸し、豆腐、ポタージュスープ、マッシュポテト、かぼちゃのペースト |
デザート・その他 | ヨーグルト、プリン、ゼリー、アイスクリーム、スムージー |
【避けるべき食べ物・飲み物】
- 硬いもの:せんべい、ナッツ、フランスパンなど
- 香辛料が多いもの:カレー、キムチ、唐辛子など
- 酸味が強いもの:酢の物、柑橘系のジュースなど
- 細かい粒状のもの:ごま、イチゴの種など(傷口に入り込むため)
- アルコール飲料:血行を促進し、痛みや出血の原因になります
普通の食事には1週間ほどかけて、傷口の様子を見ながら少しずつ戻していきましょう。
ドライソケットの予防法となってしまった場合の治し方
ドライソケットは、抜歯後に注意すべき重要なトラブルの一つです。 強い痛みを伴うため、正しい知識でしっかり予防しましょう。
【ドライソケットとは?】 通常、抜歯した穴には「血餅(けっぺい)」という血のかさぶたができます。 この血餅がフタとなって骨をばい菌から守り、傷の治りを助けます。
しかし、この大切な血餅が、うがいをしすぎたり、気になって触ったりすることで 剥がれてしまい、骨がむき出しになってしまう状態が「ドライソケット」です。 抜歯後2〜3日経ってから、ズキズキとした激しい痛みが始まるのが特徴です。
【ドライソケットの予防法チェックリスト】 以下の点に注意して、大切な血餅を守りましょう。
- □ 強いうがいはしない 口に水を含んで、静かに吐き出す程度にしてください。
- □ 傷口を舌や指で触らない 気になっても我慢し、そっとしておくことが治癒への一番の近道です。
- □ ストローを使わない 飲み物を吸うときの陰圧で、血餅が剥がれてしまうことがあります。
- □ 喫煙は控える タバコは血管を収縮させて血行を悪くし、傷の治りを妨げます。 ドライソケットの大きな原因となるため、禁煙することが強く推奨されます。
- □ 激しい運動や長風呂は避ける 血行が良くなりすぎる行動は、血餅が剥がれるリスクを高めます。
【なってしまった場合の治し方】 ドライソケットは自然に治ることは難しく、放置すると強い痛みが長く続きます。 「痛みがどんどん強くなってきた」と思ったら、我慢せずにすぐに 歯科医院に連絡してください。 歯科医院では、傷口をきれいに洗浄し、痛み止めの軟膏を入れるなどの 処置を行い、痛みを和らげます。
仕事復帰の目安|運動・飲酒・喫煙・入浴はいつから?
抜歯後の安静は、スムーズな回復のために非常に重要です。 血の巡りが良くなりすぎると、痛みや出血の原因となるため、 仕事や日常生活の制限について、目安を知っておきましょう。
【仕事復帰の目安】
- デスクワークなど安静にできる仕事 抜歯翌日から可能なことが多いですが、痛みや腫れが強ければ 1〜2日休むと安心です。
- 力仕事や体を動かす仕事、たくさん話す仕事 血圧が上がり、痛みや出血の原因になるため、 最低でも2〜3日はお休みを検討しましょう。
いずれの場合も、抜歯当日は安静に過ごすことが基本です。
【日常生活で注意すべきことの再開時期】 下の表はあくまで目安です。抜歯の難易度や回復状態には個人差があるため、 必ず歯科医師の指示に従ってください。
項目 | 再開の目安 | 注意点 |
---|---|---|
運動 | 軽い運動は2〜3日後から。激しい運動は最低1週間控える。 | 血行が良くなり、痛みや再出血のリスクが高まります。 |
飲酒 | 最低でも抜歯後3日間は禁止。できれば1週間は控えましょう。 | 炎症を悪化させ、痛み止めなど薬の効果を弱めることがあります。 |
喫煙 | 最低でも1週間、できれば傷が治るまで禁煙しましょう。 | 血行を著しく悪化させ、傷の治りを遅らせる最大のリスク因子です。 |
入浴 | 当日は軽いシャワー程度に。湯船に浸かるのは翌日以降、短時間に。 | 長風呂は血行を促進し、痛みや出血につながります。 |
抜歯後の正しい歯磨き・うがいの方法と注意点
抜歯したからといって、口のケアを怠ると細菌が繁殖し、 感染の原因になってしまいます。 傷口をいたわりながら、口の中を清潔に保つ方法を覚えましょう。
【抜歯後の歯磨き】
- いつから 抜歯当日から歯磨きは可能です。
- 磨き方 抜歯した部分とそのすぐ周りは避け、他の歯は普段通り丁寧に磨きましょう。 歯ブラシが傷口に当たらないよう、鏡を見ながらゆっくり磨くのがポイントです。 ヘッドの小さい、毛の柔らかい歯ブラシを使うと磨きやすいです。
- 傷口の周り 1週間ほど経ち、痛みが引いてきたら、 傷口の周りも毛先で優しくなでるように磨き始めましょう。
【抜歯後のうがい】
- 当日のうがい 血餅が剥がれてしまうため、「ガラガラ」という強いうがいは絶対にしないでください。
- 正しい方法 歯磨き後は、水や処方されたうがい薬を口にそっと含み、 顔を傾けて液体を行き渡らせるようにして、静かに吐き出します。 これを「ぶくぶくうがい」と呼び、血餅を守るための大切な方法です。
歯科医院によっては、感染予防のためにクロルヘキシジンなどが 含まれたうがい薬が処方されることがあります。 研究によれば、このようなうがい薬は口の中の細菌を減らし、 親知らずの周りに起こりやすい炎症を抑える助けになることが示されています。 必ず指示された用法・用量を守って使用しましょう。
まとめ
今回は、親知らずの抜歯に関する痛みや手術前後のポイントを詳しく解説しました。
「抜くべきか」「痛いのは嫌だ」といった不安は、正しい知識を持つことで和らげることができます。抜歯が必要かどうかは親知らずの生え方によって異なり、痛みや腫れも麻酔の工夫や様々な治療法、抜歯後の丁寧なケアで大きく軽減できることがお分かりいただけたかと思います。
大切なのは、ご自身の状況を正しく知り、納得して治療に臨むことです。親知らずで少しでも気になることがあれば、まずは信頼できる歯科医師に相談し、不安な点を質問することから始めてみてくださいね。
参考文献
- Abdulrahman AM, Al-Hawwaz ZM, Mohammed SK. “Removal of Horizontally Impacted Mandibular Third Molar through Buccal Plate Extirpation and Replacement – An Evaluative Study.” Indian journal of dental research 36, no. 1 (2025): 17-20.
- Aragon-Martinez OH, Gómez-Sánchez E, Bologna-Molina R, et al. “Pain control and adverse effects of parecoxib after wisdom teeth surgery: a quantitative systematic review.” Oral and maxillofacial surgery 29, no. 1 (2025): 123.
- Arekhi N, Mortazavi N, Bahramnejad E, et al. “Assessment of a combined mouthwash on pain relief in pericoronitis: a randomized clinical study.” BMC oral health 24, no. 1 (2024): 855.
- Zwittnig K, Kirnbauer B, Truschnegg A, et al. “Effectiveness of platelet-rich fibrin in third molar extractions: a randomized controlled split-mouth study.” Clinical oral investigations 28, no. 11 (2024): 615.
- Santmartí-Oliver M, Bazal-Bonelli S, Sánchez-Labrador L, et al. “Cyanoacrylate versus suture as flap closure methods in mandibular third molar surgery: a split-mouth randomized controlled clinical study.” Medicina oral, patologia oral y cirugia bucal 29, no. 4 (2024): e458-e467.
追加情報
[title]: Removal of Horizontally Impacted Mandibular Third Molar through Buccal Plate Extirpation and Replacement – An Evaluative Study.
頬側骨板切除と再配置による水平埋伏下顎第三大臼歯の抜歯:評価研究 【要約】
- 水平埋伏下顎第三大臼歯(親知らず)の抜歯における骨削除量を最小限に抑えることを目的とした研究。
- 18~46歳の男女25名(女性20名、男性5名)を対象に、水平埋伏親知らずの頬側隣接部に特定寸法の骨板を切除し、抜歯後に再配置することで骨欠損を最小化する方法を試行。
- 骨板の再配置は良好に機能し、骨板喪失は1例(4%)のみ。一時的な知覚異常を訴えた患者は2名(8%)おり、4ヶ月以内に回復。
- 頬側骨板の正確な切除と再配置により、水平埋伏下顎第三大臼歯抜歯時の骨削除量を効果的に低減できることが示唆された。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40208214
[quote_source]: Abdulrahman AM, Al-Hawwaz ZM and Mohammed SK. “Removal of Horizontally Impacted Mandibular Third Molar through Buccal Plate Extirpation and Replacement – An Evaluative Study.” Indian journal of dental research : official publication of Indian Society for Dental Research 36, no. 1 (2025): 17-20.
[title]: Pain control and adverse effects of parecoxib after wisdom teeth surgery: a quantitative systematic review.
親知らず抜歯後のパレコキシブによる疼痛コントロールと有害事象:数量的システマティックレビュー 【要約】
- 本研究は、親知らず抜歯後のパレコキシブ(COX-2阻害剤)による疼痛コントロール効果と有害事象について、数量的システマティックレビューを行った。
- 複数の研究論文を対象に、パレコキシブの鎮痛効果、副作用の発現頻度などをメタアナリシスを用いて分析した。
- パレコキシブは親知らず抜歯後の疼痛軽減に有効であるという結論が得られた可能性が高い。
- 一方で、パレコキシブの投与による有害事象(副作用)の発生頻度や種類についても解析が行われ、そのリスクについても評価されている可能性が高い。
- 本レビューは、親知らず抜歯後の鎮痛薬選択において、パレコキシブの有効性と安全性を評価する上で重要なエビデンスを提供している。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40524116
[quote_source]: Aragon-Martinez OH, Gómez-Sánchez E, Bologna-Molina R, Molina-Frechero N, López-Verdín S, Serafín-Higuera N, Guzmán-Flores JM, Hermida-Rojas M and Isiordia-Espinoza MA. “Pain control and adverse effects of parecoxib after wisdom teeth surgery: a quantitative systematic review.” Oral and maxillofacial surgery 29, no. 1 (2025): 123.
[title]: Assessment of a combined mouthwash on pain relief in pericoronitis: a randomized clinical study.
summary: ## 【タイトル】 歯冠周囲炎における複合うがい薬の鎮痛効果評価:ランダム化臨床試験
【要約】
- 背景: 歯冠周囲炎は、特に下顎において、部分的に萌出した親知らずの周囲に発生する炎症であり、歯肉が歯を覆っている場合が多い。治療法は、歯肉の手術から抜歯まで様々である。本研究では、クロルヘキシジン、ベンザルコニウム、ナノシルバー、アモキシシリン、メトロニダゾールを含むうがい薬が、急性歯冠周囲炎における疼痛緩和と最大口蓋開口の改善に効果があるかどうかを評価した。
- 方法: ゴルガン歯科大学で行われたランダム化比較臨床試験において、48人の歯冠周囲炎患者を2つのグループに無作為に割り当てた。対照群は0.12%クロルヘキシジンうがい薬を使用し、症例群はクロルヘキシジン、ベンザルコニウム、ナノシルバー、アモキシシリン、メトロニダゾールを含むうがい薬を使用した。視覚アナログ尺度 (VAS) スコアを7日間記録し、最大口蓋開口 (MMO) を開始時と7日後に測定した。分析にはSPSS v20を使用。
- 結果: 本研究では、平均年齢21.56歳の48人の患者を対象に、複合うがい薬とクロルヘキシジンうがい薬の歯冠周囲炎に対する効果を比較した。両群間で疼痛緩和に有意差は認められなかったが、両群とも治療後に疼痛が軽減し、MMOが改善した。性別の分布は両群でバランスしていた。
- 結論: 結果は、クロルヘキシジンうがい薬と複合うがい薬のどちらも最大口蓋開口を有意に改善することを示している。しかしながら、2群間で効果に顕著な差は認められなかった。これらの知見は、これらのうがい薬が口腔衛生に有益である可能性を示唆しており、さらなる詳細な研究が必要である。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39068391
[quote_source]: Arekhi N, Mortazavi N, Bahramnejad E, Khouri V, Tajaldini M, Asgari N and Sohrabi A. “Assessment of a combined mouthwash on pain relief in pericoronitis: a randomized clinical study.” BMC oral health 24, no. 1 (2024): 855.
[title]: Effectiveness of platelet-rich fibrin in third molar extractions: a randomized controlled split-mouth study.
summary: ## 【タイトル】 血小板リッチフィブリン(PRF)の第三大臼歯抜歯における有効性:ランダム化比較対照スプリットマウス研究
【要約】
- 目的: 本研究は、下顎または上顎の第三大臼歯抜歯後の血小板リッチフィブリン(PRF)の使用について調査した。上顎と下顎の第三大臼歯の抜歯は通常、片側につき1回の手術で同時に行われるため、本研究ではPRFがどのように影響するかを調査することを目的とした。
- 方法: 本研究は、25人の患者を対象とした、前向き単盲検ランダム化比較対照臨床試験(スプリットマウスデザイン)を実施した。第三大臼歯抜歯後、試験群の抜歯窩には固形PRF血塊を充填し、対照群の抜歯窩は従来の方法で処置した。主要評価項目は腫脹で、デジタルおよびアナログで測定した。副次的評価項目には、開口制限、膿、血腫、および第2大臼歯の臨床的付着喪失(CAL)が挙げられ、それぞれ1、3、7、14日目に評価した。患者中心のアウトカム指標と鎮痛剤および抗生物質の使用量は、0〜7日目に記録した。統計解析には、対応のあるt検定、Wilcoxon検定、およびカイ二乗検定を使用した。
- 結果: 14日目に、試験群では腫脹が有意に低かった(p<0.05)。痛み、開口制限、およびCALに有意な差は認められなかった。試験群では、鎮痛剤の服用回数と服用期間が有意に少なかった(p<0.05)。
- 結論: PRFは、鎮痛剤の服用量と服用期間を短縮した。PRFは、14日後の腫脹を有意に軽減した。他のパラメータに差が見られなかったことから、PRFの適用をルーチンの親知らず抜歯に統合することが重要である。
- 臨床的意義: PRFは、腫脹の軽減と鎮痛剤の服用量の軽減および短縮により、第三大臼歯抜歯の長期的な転帰に影響を与える。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39467892
[quote_source]: Zwittnig K, Kirnbauer B, Truschnegg A, Jakse N, Wolf A, Sokolowski A, Mischak I and Payer M. “Effectiveness of platelet-rich fibrin in third molar extractions: a randomized controlled split-mouth study.” Clinical oral investigations 28, no. 11 (2024): 615.
[title]: Cyanoacrylate versus suture as flap closure methods in mandibular third molar surgery: a split-mouth randomized controlled clinical study.
下顎親知らず抜歯におけるフラップ閉鎖法:シアノアクリレートと縫合糸の比較 【要約】
- 下顎親知らず抜歯後のフラップ閉鎖法として、従来は縫合糸が標準的に用いられてきたが、合併症のリスクがある。
- シアノアクリレートなどの組織接着剤は、縫合糸の欠点を克服する代替的なフラップ閉鎖法として登場している。
- 本研究は、下顎親知らず抜歯におけるフラップ閉鎖法としてシアノアクリレートと4/0シルク縫合糸を比較し、術後の疼痛、腫脹、開口制限、治癒、患者報告アウトカムを評価したランダム化分割口臨床試験である。
- 17人の患者を対象に、34本の下顎親知らず抜歯を実施した。
- 対照群では4/0シルク縫合糸で、試験群ではシアノアクリレートでフラップ閉鎖を行った。
- 術後、腫脹、疼痛、開口制限、治癒、患者報告アウトカムを記録した。
- これらの変数を、SPSS統計ソフトウェアバージョン28.0.0を使用してノンパラメトリックマン・ホイットニーのU検定で分析した。
- 全ての結果について、95%信頼区間を記録した(有意水準p<0.05、両側検定)。
- 腫脹、疼痛、開口制限、治癒、患者報告アウトカムにおいて、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった(p<0.05)。
- 術後経過や患者報告アウトカムにおいて、4/0シルク縫合糸とシアノアクリレートによるフラップ閉鎖間に統計学的に有意な差は認められなかった。
- しかし、より確実な結論を得るためには、より大規模なサンプルサイズを用いたさらなる研究が必要である。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38907642
[quote_source]: Santmartí-Oliver M, Bazal-Bonelli S, Sánchez-Labrador L, Beca-Campoy T, Pérez-González F, Cobo-Vázquez CM, Madrigal Martínez-Pereda C and Meniz-García C. “Cyanoacrylate versus suture as flap closure methods in mandibular third molar surgery: a split-mouth randomized controlled clinical study.” Medicina oral, patologia oral y cirugia bucal 29, no. 4 (2024): e458-e467.