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矯正治療による歯髄壊死について
歯並びをきれいにするはずの矯正治療で、歯の神経が死んでしまう「歯髄壊死」。こんな話を聞くと、治療を受けるのが怖くなってしまいますよね。しかし、これは決して他人事ではなく、装置の種類にかかわらず、治療を受ける誰にでも起こりうるリスクなのです。
実は、治療で歯にかかる力が強すぎること以外にも、過去の虫歯治療の経験や、日本人を含むアジア人に多いとされる薄い歯ぐきや骨格も、歯髄壊死のリスクを高める要因となります。
矯正治療で歯髄壊死が起こる3つの原因
「矯正治療で歯の神経が死んでしまう」。 こんな話を聞くと、治療を受けるのが怖くなってしまいますよね。
歯並びをきれいにする治療なのに、なぜそんなことが起きるのでしょうか。 これは「歯髄壊死(しずいえし)」という現象です。
歯の中心には、神経や血管が集まった「歯髄」という部分があります。 歯髄は、歯に栄養を送る大切な役割を担っています。 何らかの原因で、この歯髄への血液の流れが止まると歯髄壊死が起こります。
ここでは、矯正治療で歯髄壊死が起こる主な原因を3つ解説します。
歯にかかる力が強すぎる・移動速度が速すぎる
矯正治療は、歯に力を加えて骨の作り替えを促し、歯並びを整えます。 歯が動く方向の骨は溶け、動いた後のすき間には新しい骨ができます。 この「骨が溶けて、新しくできる」サイクルを繰り返すのが基本です。
しかし、歯にかける力が強すぎたり、動かす速さが速すぎたりすると、 骨が作られるスピードが、骨が溶けるスピードに追いつかなくなります。
そうなると、歯を支える骨全体が薄くなってしまいます。 特に歯の根の先は、血液を送る血管がとても細くデリケートです。 強すぎる力がかかると、この細い血管が押しつぶされて血流が止まります。
この状態が続くと、歯髄に栄養が届かなくなり、 結果として歯の神経が死んでしまう歯髄壊死のリスクが高まるのです。
過去の虫歯治療や歯をぶつけた経験がある
矯正治療を始める前の歯の状態も、歯髄壊死のリスクに大きく影響します。 健康な歯なら耐えられる力でも、過去にダメージを受けた歯は弱っています。
【特に注意が必要な歯の状態】
- 大きな虫歯の治療歴がある
- 神経の近くまで進んだ虫歯を治療した歯は、
- 歯髄そのものがすでに弱っている可能性があります。
- 歯を強くぶつけた経験がある
- 転んだりスポーツでぶつけたりした歯は、
- 症状がなくても歯の根で内出血が起きていることがあります。
これらの歯は、いわば体力が落ちている状態と同じです。 そこに矯正治療の力が加わると、歯髄壊死につながることがあります。 治療を始める前の精密検査で、一本一本の歯の状態を把握することが大切です。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正のリスクの違い
矯正装置には、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などがあります。 どちらの方法でも歯髄壊死のリスクはゼロではありません。
- ワイヤー矯正
- 歯にブラケットという装置をつけ、ワイヤーで力をかけます。
- 調整が適切でないと、一部の歯に強い力が集中することがあります。
- マウスピース矯正
- 透明なマウスピースを交換して歯を動かします。
- 歯全体を覆うため力は分散しやすいですが、歯の根の細かいコントロールが難しい場合があります。
ある研究報告では、マウスピース矯正とワイヤー矯正を比べたとき、 歯ぐきの健康の維持しやすさに大きな差があるという十分な証拠は、 今のところないとされています。
どちらの装置を選ぶ場合でも、精密な検査に基づいた治療計画と、 担当する歯科医師による丁寧な管理が何よりも重要です。
【要注意】歯が動きにくい骨格や薄い歯肉(歯肉退縮のリスク)
歯髄壊死のリスクは、生まれ持った骨格や歯ぐきのタイプにも左右されます。 特に、歯を支える骨や歯ぐきがもともと薄い方は注意が必要です。
日本人を含むアジア人は、欧米人と比べてあごの骨が小さく、 歯を支える骨や歯ぐきが薄い傾向にあると言われています。 歯の根が透けて見えるような薄い歯ぐきの方は、要注意です。
このような方は、矯正治療で歯ぐきが下がりやすい傾向があります。 これを「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」と呼びます。 歯肉退縮が起こると歯の根が露出し、歯髄への刺激が強まります。
近年の研究では、歯ぐきや骨が薄い成人の方が矯正治療を行う場合、 歯肉退縮のリスクが高まることが指摘されています。
ご自身の歯ぐきのタイプを事前に把握し、 リスクと対策について担当医としっかり相談することが大切です。
歯髄壊死を見抜くための4つのセルフチェック
矯正治療中に、「いつもと歯の様子が違うな」と感じると、とても心配になりますよね。 「もしかして、歯の神経が死んでしまったのでは?」と不安になるかもしれません。
歯の神経が死んでしまう「歯髄壊死(しずいえし)」は、最初は気づきにくいことがあります。 しかし、ご自身で確認できるサインがいくつかあります。
ここでは、歯髄壊死の可能性に早く気づくための4つのチェックポイントを紹介します。 もし当てはまることがあれば、そのままにせず担当の歯医者さんに相談することが大切です。
歯が灰色や黒っぽく変色してきた
健康な歯は、少し黄色みがかった白色をしています。 これは、歯の内側にある象牙質(ぞうげしつ)という部分の色が、表面のエナメル質から透けて見えるためです。
しかし、歯の神経である歯髄が死んでしまうと、歯への血液の流れが止まります。 すると、歯の中に残った血液の成分などが古くなり、歯を内側から変色させてしまうのです。
歯磨きで落ちない色の変化は、歯の内部で異常が起きているサインかもしれません。
【色の変化チェックリスト】
- 歯の色
- だんだんと灰色や黒っぽい色に変わってきた
- 歯の透明感
- 健康な歯が持つ透明感がなくなり、くすんで見える
- 変色の場所
- 歯の根元に近い部分から色が変わり始めている
何もしなくてもズキズキ痛む、または温度を感じなくなった
歯髄壊死になる過程で、痛みの感じ方が変わることがあります。 まず神経が炎症を起こす「歯髄炎(しずいえん)」になり、その後、神経が完全に機能を失う「歯髄壊死」に進みます。
【初期の痛み:歯髄炎】
- 何もしていないのにズキズキと脈打つように痛む
- 温かい食べ物や飲み物で痛みが強くなる
- 夜、ベッドで横になると痛みがひどくなる
【進行後の変化:歯髄壊死】
- あれほどひどかったズキズキする痛みが、急になくなった
- 冷たい水や氷を食べても、その歯だけ何も感じない
痛みが消えたからといって、「治った」わけではありません。 むしろ、神経が完全に死んでしまったサインである可能性が高いのです。 痛みの有無だけでなく、温度に対する感覚にも注意してみてください。
歯茎にニキビのようなおでき(フィステル)ができた
歯の神経が死んで細菌に感染すると、歯の根の先に膿(うみ)がたまります。 この膿が、出口を探して歯を支える骨を溶かし、歯茎の表面に出てきたものが「フィステル」です。 見た目は、ニキビや口内炎によく似ています。
【歯茎の「おでき」チェックリスト】
- 見た目
- 歯茎にできた、白やピンク色の小さなプクッとした膨らみ
- 状態
- 指でそっと押すと、白い膿が出てくることがある
- 痛み
- ほとんど痛みを感じないことが多い
- 経過
- 自然に潰れても、また同じ場所にできてくる
フィステルは、体の中から「異常が起きていますよ」と教えてくれる大切なサインです。 痛みがないからと放っておかず、歯茎にこのようなおできを見つけたら、すぐに歯医者さんに見せましょう。
歯の根元が見える歯肉退縮が同時に起きている
歯肉退縮(しにくたいしゅく)とは、歯茎がだんだんと下がり、これまで隠れていた歯の根の部分が見えてしまう状態です。 歯髄壊死によって歯の根の先に炎症が広がると、歯を支える骨が溶かされます。 歯茎は骨に支えられているため、土台の骨がなくなると一緒に下がってしまうのです。
実は、矯正治療そのものも、歯肉退縮が起こるきっかけになることがあります。 ある研究では、矯正治療が終わった後の「保定期間(ほていきかん)」に、歯肉退縮が進むことがあると報告されています。 保定期間とは、動かした歯が元の位置に戻らないよう、装置で固定する期間のことです。 この研究によると、特に犬歯(前から3番目のとがった歯)で歯肉退縮が起こりやすいとされています。
歯肉退縮は、見た目にも影響を与えます。 特に、笑顔の中心になる上の前歯(中心切歯)は、少し歯茎が下がっただけでも目立ちやすいことがわかっています。 別の研究では、中心切歯で1.2mm、その隣の歯(側切歯)で2.0mmの歯肉退縮があると、多くの人が「左右で違う」と気づくという結果が出ています。 つまり、真ん中の歯はわずかな変化でも笑顔の印象を変えてしまう可能性があるのです。
【歯肉退縮のチェックポイント】
- 以前と比べて歯が長くなったように見える
- 歯と歯の間の三角形のすき間が大きくなった
- 歯の根元の黄色っぽい部分が見えている
もともと歯茎が薄い方は、矯正治療で歯肉退縮が起こるリスクが高いと考えられます。 歯の色の変化や痛みだけでなく、歯茎の状態もしっかりと確認することが、お口の健康を守るために非常に重要です。
歯髄壊死の治療法と後悔しないための3つの対策
矯正治療中に「歯の神経が死んでしまったかもしれません」と告げられたら、 誰でも大きなショックを受けてしまいますよね。
しかし、歯髄壊死は特別なことではありません。 大切なのは、正しい知識を持って、ご自身に合った治療法を選ぶことです。
ここでは、歯髄壊死の診断から治療の流れ、 そして治療後の歯を長持ちさせるための方法や、 リスクを減らすための予防策について、わかりやすく解説します。
診断から治療まで|根管治療の流れ・期間・費用
歯髄壊死が疑われる場合、まずは正確な診断が必要です。 レントゲンで歯の根の状態を確認したり、 神経が温度や電気に反応するかを専用の器具で調べたりします。
診断が確定した場合、一般的には「根管治療(こんかんちりょう)」という、 歯を残すことを目指す治療を行います。
治療期間は歯の状態によりますが、数回の通院が必要です。 数週間から数ヶ月かかることもあります。
治療で神経を抜いた歯の寿命と変色の対処法
「神経を抜いた歯は、もう長持ちしないのでは?」と心配されるかもしれません。 確かに、神経を失った歯は栄養が行き渡らなくなります。 健康な歯に比べて脆くなり、割れやすくなる傾向はあります。
しかし、丁寧な根管治療と、その後の被せ物による補強、 そして日々の丁寧なケアと定期的なメンテナンスを続けることで、 その歯を長く使い続けることは十分に可能です。
一方で、治療後に歯が黒っぽく変色することがあります。 これは、壊死した組織の色素が歯にしみ込んだりするためです。 この変色への対処法としては、以下のような選択肢があります。
対処法 | 特徴 |
---|---|
ウォーキングブリーチ | 歯の内側にホワイトニング剤を入れ、中から白くする方法です。 |
ラミネートベニア | 歯の表面を薄く削り、セラミックの薄い板を貼り付けて色と形を整えます。 |
セラミッククラウン | 歯全体を覆うセラミックの被せ物で、自然な白さと強度を取り戻します。 |
矯正治療前にできるリスク低減策(精密検査・歯科医との相談)
歯髄壊死という事態を避けるために最も大切なのは、矯正治療を始める前の準備です。 特に、ご自身の歯や歯ぐきの状態を正確に把握することが重要になります。
まとめ
今回は、矯正治療で起こりうる歯髄壊死について、その原因からセルフチェック、治療法や対策までを詳しく解説しました。
歯の神経が死んでしまうと聞くと不安になりますが、そのリスクはゼロではありません。 しかし、治療を始める前にCTなどでご自身の歯や骨、歯ぐきの状態を精密検査でしっかり把握し、起こりうるリスクと対策について歯科医師と納得できるまで話し合うことが必要です。
もし治療中に歯の変色や痛みの変化、歯茎のできものなどのサインに気づいたら、決して放置せず、すぐに担当医に相談してください。 正しい知識を持って、信頼できる歯科医師と協力することが、後悔のない美しい歯並びを手に入れるための最も大切な一歩となるでしょう。
参考文献
- Tironi F, Sofos S, Wong J, Leyva M, Contasti G, Nevins M, Vardar-Sengul S. “Periodontal phenotype modification in surgically facilitated orthodontics: A case report.” Clinical advances in periodontics (2024).
- Fürhauser N, Rosen R, Fürhauser L, Fürhauser R. “The Perception of Unilateral Recessions in the Maxillary Esthetic Zone: A Survey Among Dentists and Non-Professionals.” Journal of esthetic and restorative dentistry 37, no. 4 (2025): 883-889.
- Maboudi A, Fekrazad R, Moosazadeh M, Rouhaninezhad H, Mollaei M, Namdar P. “Comparing Circumferential Supracrestal Fiberotomy with Surgical Scalpel Versus Photobiomodulation in Orthodontic Relapse Reduction: A Clinical Trial.” Photobiomodulation, photomedicine, and laser surgery 41, no. 8 (2023): 408-414.
- Celis B, Sanz-Esporrin J, Verdasco C, Yañez-Vico RM, Martin C. “Incidence of Gingival Recessions in Adolescent Orthodontic Patients Treated With Fixed Appliances and Lingual Retainer.” Journal of clinical periodontology 52, no. 4 (2025): 589-598.
- クリアアライナーと固定装置による矯正治療中の歯周状態と歯肉退縮の評価:システマティックレビューとメタアナリシス
追加情報
[title]: Periodontal phenotype modification in surgically facilitated orthodontics: A case report.
外科的補助による矯正治療が歯周組織の表現型に及ぼす影響:症例報告 【要約】
- 成人において、歯周組織が薄い症例では、矯正治療に時間がかかり、歯肉退縮のリスクが高まるという課題がある。
- 本症例報告では、歯周組織の表現型を改善しながら矯正歯の移動を促進するために、外科的補助による矯正治療(SFOT)が提案された。下顎前歯に歯肉が薄く骨欠損がみられた患者に対し、骨移植材、血小板凝集塊(PRF)、コラーゲン膜を用いて、軟硬組織を増強することで、将来的な歯肉退縮を予防し、治療時間を短縮するSFOTが実施された。
- 6ヶ月と3年の経過観察で、骨の充填、歯肉退縮の absence、厚い歯肉縁を確認。SFOTにより、6ヶ月で目的の歯の移動が達成され、歯周組織の安定した状態が維持された。
- SFOTは、矯正歯の移動の促進、歯周組織表現型の改善、歯槽骨を超えた歯の移動の防止、骨欠損と歯肉退縮のリスクの軽減といった臨床的利点を提供した。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39540554
[quote_source]: Tironi F, Sofos S, Wong J, Leyva M, Contasti G, Nevins M and Vardar-Sengul S. “Periodontal phenotype modification in surgically facilitated orthodontics: A case report.” Clinical advances in periodontics , no. (2024): .
[title]: The Perception of Unilateral Recessions in the Maxillary Esthetic Zone: A Survey Among Dentists and Non-Professionals.
上顎審美ゾーンにおける片側性歯肉退縮の知覚に関する歯科医師と一般人の調査 【要約】
- 上顎前歯の審美的な特徴は、笑顔の美しさに大きく影響を与える。特に非対称な歯肉退縮は、笑顔の審美性を損なう可能性がある。
- 本研究は、中心切歯または側切歯周囲の歯肉がわずかに歯根方向に移動した際の、歯科医師と一般人の知覚を調査することを目的とした。
- 審美ゾーンの理想的な画像に基づいて、中心切歯または側切歯の非対称的な修正をデジタル画像で作成し、視覚アナログ尺度(VAS)を用いて笑顔全体の外観を評価するデジタル調査を実施した。参加者の歯科専門知識、年齢、性別を記録した。各画像について、歯のいずれかが目に見える炎症を引き起こすかどうかを質問した。各歯の変化の平均結果と歯科専門知識との相関関係を統計的に分析した。
- 114人の参加者が調査に参加した。中心切歯と側切歯の間で審美的な知覚に有意差があった(p < 0.001)。目に見える非対称性歯肉退縮の知覚閾値は、中心切歯で1.2 mm、側切歯で2.0 mmであった。性別と年齢は審美評価に有意差を示さず、歯科専門知識は大きな歯肉退縮の場合にのみ有意差を示した(p < 0.05)。
- 中心切歯よりも側切歯の方が非対称的な変化が目立ちにくいことが分かった。0.8 mmの片側性歯肉退縮の変化は、笑顔全体の評価に影響を与えないようであった。参加者の歯科専門知識、年齢、性別は、より厳しい審美的な知覚と有意に相関しなかった。
- 本研究は、上顎前歯における片側性歯肉退縮の知覚が中心切歯と側切歯で異なり、側切歯の歯肉退縮は笑顔全体の外観への影響が少ないことを明らかにした。これらの知見は、小さな歯肉の変化が全体的な審美的な結果に許容できる可能性があることを示唆しており、修復または矯正治療の前に患者の期待と治療選択肢について話し合い、より目立ちやすい中心切歯の歯肉縁を優先することの重要性を強調している。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39722205
[quote_source]: Fürhauser N, Rosen R, Fürhauser L and Fürhauser R. “The Perception of Unilateral Recessions in the Maxillary Esthetic Zone: A Survey Among Dentists and Non-Professionals.” Journal of esthetic and restorative dentistry : official publication of the American Academy of Esthetic Dentistry … [et al.] 37, no. 4 (2025): 883-889.
[title]:
矯正歯科におけるリジェクションの軽減における円周状頂面繊維切除(CSF)と手術用メスと光生物調節(photobiomodulation)の比較:臨床試験 【要約】
- 目的:本研究は、矯正歯科における歯の回転後のリジェクション軽減における円周状頂面繊維切除(CSF)と手術用メス、レーザーCSF、および光生物調節の有効性を比較することを目的としている。
- 背景:リジェクションとは、矯正装置の取り外し後に歯が手術前の位置に戻る傾向のことである。
- 方法:この無作為化比較臨床試験は、固定矯正治療の最終段階で90本の回転した歯に実施された。歯は無作為に6つのグループに分けられ、(1)対照(介入なし)、(2)光生物調節のみ、(3)従来のCSF、(4)レーザーCSF、(5)従来のCSFと光生物調節、および(6)レーザーCSFと光生物調節となった。写真とCADソフトウェアを使用して、臨床的な測定と歯科模型で測定が行われた。また、患者の疼痛レベルを視覚的アナログスケールでファイバロトミー後の最初の24時間で測定した。データはANOVAおよびKruskal-Wallisテストによって分析された。
- 結果:リジェクションの程度(p = 0.014)および割合(p = 0.035)は、6つのグループ間で有意に異なり、最も高いのは対照群で、それに続いて光生物調節のみ、レーザーCSF、従来のCSF、従来のCSFと光生物調節、そして最後にレーザーCSFと光生物調節であった。また、光生物調節とレーザーCSF、および光生物調節と従来のCSFは、他のグループと有意に異なる結果を示した。 6つのグループ間では、溝の深さの変化、歯肉退縮(主要な冠高と二次冠高の差)、または疼痛スコアに有意な差はなかった(p> 0.05)。
- 結論:この研究は、レーザーCSFまたは従来のCSFと光生物調節の併用がリジェクションを軽減するのに効果的であることを示唆している。ただし、このアイデアをサポートするためにさらなる臨床試験が必要である。 イラン臨床試験登録(IRCT20210621051653N1)。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37579132
[quote_source]: Maboudi A, Fekrazad R, Moosazadeh M, Rouhaninezhad H, Mollaei M and Namdar P. “Comparing Circumferential Supracrestal Fiberotomy with Surgical Scalpel Versus Photobiomodulation in Orthodontic Relapse Reduction: A Clinical Trial.” Photobiomodulation, photomedicine, and laser surgery 41, no. 8 (2023): 408-414.
[title]: Incidence of Gingival Recessions in Adolescent Orthodontic Patients Treated With Fixed Appliances and Lingual Retainer.
固定式装置と舌側リテーナーを用いた矯正治療を受けた思春期患者における歯肉退縮の発生率 【要約】
- 矯正治療後、少なくとも5年間のリテーナー装着期間を経て、下顎前歯における歯肉退縮のリスク要因を、非矯正治療群と比較検討した。
- 矯正治療前には歯肉退縮がなかった89人の矯正治療患者を対象とした。治療前(T1)、治療後(T2)、リテーナー装着後少なくとも5年後(T3)のデーターを収集し、88人の非矯正治療患者を対照群とした。歯肉退縮面積をデジタル的に評価し、t検定、カイ二乗検定、多重線形回帰モデルを用いて分析した。
- 矯正治療群では、T2で11.24%、T3で67.42%に歯肉退縮が見られ、全てタイプ1、クラスA(-)であった。対照群では15.91%に歯肉退縮が見られ、T2の矯正治療群と同様であったが、T3の矯正治療群と比較して有意に低かった。歯肉退縮は犬歯に最も多く見られ(1.85 mm²; 95% CI: 2.61-7.70; p < 0.005)、回帰分析の結果、女性、薄いフェノタイプ、高角骨格パターン、下顎切歯の最終的な傾斜増加、プロービング深度の増加が歯肉退縮の発生率増加と関連していた。
- 矯正治療後の歯肉退縮の発生率は対照群と比較して同等であったが、リテーナー装着後には有意に増加した。いくつかのリスク指標が歯肉退縮の発生を予測する可能性がある。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39780360
[quote_source]: Celis B, Sanz-Esporrin J, Verdasco C, Yañez-Vico RM and Martin C. “Incidence of Gingival Recessions in Adolescent Orthodontic Patients Treated With Fixed Appliances and Lingual Retainer.” Journal of clinical periodontology 52, no. 4 (2025): 589-598.
[title]:
クリアアライナーと固定装置による矯正治療中の歯周状態と歯肉退縮の評価:システマティックレビューとメタアナリシス 【要約】
- バックグラウンド: CA(クリアアライナー)およびFA(固定装置)による矯正治療中における歯周健康の維持と歯肉退縮の発生を評価することを目的とした。
- 方法: 潜在的な論文を特定するために、MEDLINE、Scopus、The Cochrane Library、Web of Scienceの電子検索を2022年9月までに実施した。含まれる研究は、バッカルFAおよびCAによる矯正治療中の歯周健康状態と歯肉退縮の評価を行った前向きおよび後ろ向きの研究である。症例シリーズ、横断研究、および追跡期間が2ヶ月未満の研究は除外した。含まれる論文からデータを抽出し、Cochrane協力ツールを使用して、研究間のバイアスリスクを2つの調査者が独立に評価した。データの質的および量的分析を実施し、バッカルFAとCA治療の異なる追跡期間における歯周指標を比較するために、ランダム効果モデルを用いたペアワイズメタアナリシスを行った。
- 結果: 129件の潜在的な研究のうち、最終的に12件の研究が含まれた。そのうち8件が定量的な分析に含まれることができた。CAはわずかに歯周健康指標を維持するようである。中期の追跡期間におけるプラーク指数(平均差(MD):-0.99、95%信頼区間(CI)[-1.94 to -0.03]、P=0.04、I2=99%)および長期の追跡期間におけるポケット探診深度(MD:-0.93mm、95% CI [-1.16 to 0.7]、P<0.0001)は、CAに好意的な結果を示す統計的に有意な差が報告された。
- 結論: 現時点では、CAがFAよりも矯正治療中の歯周健康をより良く維持する十分な証拠はありません。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36641738
[quote_source]: Crego-Ruiz M and Jorba-García A. “Assessment of the periodontal health status and gingival recession during orthodontic treatment with clear aligners and fixed appliances: A systematic review and meta-analysis.” Medicina oral, patologia oral y cirugia bucal 28, no. 4 (2023): e330-e340.