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矯正治療による歯根吸収について

きれいな歯並びを手に入れる矯正治療。しかし、その過程で「歯の根が溶けて短くなる」という、あまり知られていないリスクがあることをご存知でしょうか。これは「歯根吸収」と呼ばれ、治療を受ける誰にでも起こりうる現象です。

「自分の歯は大丈夫?」と不安に思うかもしれません。実は、歯根吸収の起こりやすさには、治療の力加減や期間だけでなく、生まれ持った歯の形や過去の怪我、さらには遺伝的な体質まで複雑に関係しています。

歯根吸収が起こる3つの主な原因から、研究で報告されている予防策、そして万が一の際の対処法までを解説します。

矯正治療で起こる歯根吸収の3つの原因と検査法

矯正治療できれいな歯並びを手に入れることは、見た目だけでなく、お口の健康にとっても大切です。 しかし治療には、いくつか知っておくべきリスクもあります。 その一つが「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」です。

歯の根が溶けて短くなる、と聞くと心配になりますよね。 これは矯正を受ける誰にでも起こるわけではありません。 ただ、どのような原因で起こり、どうすれば見つけられるのか。 これを事前に知っておくことが、安心して治療を受ける鍵です。 ここでは、歯根吸収の3つの主な原因と検査法を解説します。

歯の根が溶ける?歯根吸収のメカニズムと自覚症状の有無

歯根吸収とは、歯の根(歯根)が少しずつ溶けて短くなる現象です。 これを理解するために、まず歯がどうやって動くのか見てみましょう。

矯正治療では、歯に力をかけて骨の中を移動させます。 このとき、歯と骨の間にある「歯根膜(しこんまく)」という薄いクッションのような組織が、重要な働きをします。

  1. 歯が動きたい方向の歯根膜は、グッと押されます。
  2. 押された側の骨を溶かすため、「破骨細胞(はこつさいぼう)」という細胞が働きます。
  3. 反対に、引っ張られる側では、新しい骨が作られます。

この「骨を壊して、新しく作る」作業を繰り返すことで、歯はゆっくりと動きます。 通常、歯の根はとても硬く、簡単には溶けません。 しかし、この骨を壊す破骨細胞の働きが強すぎると、骨だけでなく歯根まで少し溶かしてしまうことがあるのです。

重要なのは、歯根吸収が起きても、初めのうちは痛みなどの自覚症状がほとんどないことです。 ご自身で気づくのは難しく、多くは定期的な検査で判明します。 気になることがあれば早めに担当医へ伝えましょう。

原因①:強すぎる矯正力や長期間の治療

歯根吸収が起こる原因として、治療で使う「力」と「時間」が大きく関係しています。

強すぎる矯正力

 早く歯を動かしたいからと、強い力をかけるのは良くありません。力が強すぎると、歯の根の周りにある歯根膜の血流が悪くなります。  いわば、歯の根が酸欠のような状態になってしまうのです。 その結果、歯を守る機能が弱まり、歯根が溶けやすくなります。  動物実験でも、加える力の大きさが歯根吸収に関係することがわかっています。  歯の周りの組織に負担をかけすぎないよう、適切な力でゆっくりと歯を動かすことが重要です。

長期間の治療

 治療期間が長引けば、それだけ歯に力がかかる時間も増えます。 これも、歯根吸収のリスクを高める要因の一つです。 特に、以下のような場合は治療が長くなる傾向があります。

  • 歯を動かす距離が大きい
  • 歯並びが複雑で、難しい動きが必要
  • 患者さんの協力(ゴムの使用など)が難しい

担当医が定期的に力の強さや歯の動きを細かく確認します。 そして、丁寧に調整していくことがリスクを減らすことにつながります。

原因②:歯の形状や骨格的な特徴(過蓋咬合など)

患者さん一人ひとりの生まれ持った個性も、歯根吸収の起こりやすさに関係します。

歯の形状

 もともとの歯の根の形が、以下のような特徴を持つ場合、歯根吸収が起こりやすいと考えられています。

  • 歯根がもともと短い、または細い歯  少し吸収されただけでも、歯を支える力が弱くなりやすいです。
  • 歯根の先が鉛筆のように尖っている歯  力の集中が起こりやすく、吸収のきっかけになることがあります。
  • 過去に神経の治療をした歯(失活歯)  健康な歯に比べ、組織がもろくなっている可能性があります。

骨格的な特徴

 噛み合わせの状態、特に「過蓋咬合」は注意が必要です。 これは、上の前歯が下の前歯に深く覆いかぶさる噛み合わせのことです。

ある研究では、この過蓋咬合の患者さんは、正常な噛み合わせの人と比べて、前歯を支える唇側の骨が薄い傾向にあると報告されています。 骨が薄い場所で歯を動かすと、歯根が骨から外れてしまう危険があります。 そのため、歯の傾き(トルク)を精密にコントロールしながら、慎重に治療を進める必要があるのです。

原因③:歯根膜の炎症反応や遺伝的要因

目に見えない、体の中の反応や体質も歯根吸収に影響します。

歯根膜の炎症反応

 矯正で歯に力が加わると、歯根膜では歯を動かすために必要な「炎症反応」が起こります。  この反応が、骨を溶かす破骨細胞を呼び寄せ、歯の移動を助けます。  これは、治療に必要な正常な反応です。  しかし、この炎症反応が必要以上に強くなると、歯根を溶かす働きも強まり、歯根吸収が進んでしまうことがあります。  近年の研究では、特定の遺伝子(LncRNA XISTなど)が、この炎症反応を調節している可能性も指摘されています。

遺伝的要因

 歯根吸収の起こりやすさには、大きな個人差があります。  これには、遺伝的な要因、つまり「体質」が関わっていると考えられています。  骨の作り変えの活発さや、炎症反応の強さなどは人それぞれです。  ご家族に歯根吸収が起こりやすい方がいる場合、体質を受け継いでいる可能性があります。

歯根吸収のリスクを高める4つの要因と予防策

矯正治療をお考えの際に、歯の根が短くなるという話を聞き、ご不安に思うかもしれません。 歯根吸収は誰にでも起こるわけではありません。 しかし、いくつかの要因が重なると、そのリスクが高まることがあります。

どのような要因があるのかを事前に知ることが大切です。 そして、適切な対策をとることで、リスクを抑えることが可能です。 ここでは、歯根吸収のリスクを高める要因と、その予防策を詳しく解説します。

過去の歯の外傷(ぶつけた経験)や神経のない歯

矯正治療を始める前の歯の状態は、歯根吸収のリスクに影響します。 特に注意したいのは、過去にぶつけて強い衝撃を受けた歯です。 また、すでに神経の治療を終えている歯も、慎重に扱う必要があります。

  • 過去に外傷を受けた歯  子どもの頃などに歯を強くぶつけた経験はありませんか。 見た目に問題がなくても、歯の根や周りの組織はダメージを負っています。 このような歯は、健康な歯に比べて矯正の力にデリケートです。 そのため、歯根吸収が起こりやすくなることがあります。
  • 神経のない歯(失活歯)  深いむし歯などで神経を抜いた歯は「失活歯(しっかつし)」と呼ばれます。  この歯は、栄養を送る血管も一緒に失っている状態です。  そのため、健康な歯と比べて、組織がもろくなっています。  歯を動かす際の負担が大きくなり、歯根吸収のリスクが高まる傾向にあります。

これらの歯があるからといって、矯正治療ができないわけではありません。 治療を始める前に、過去のケガや治療歴を担当医へ正確に伝えましょう。 そして、レントゲンなどで歯の状態を詳しく調べてもらうことが非常に重要です。

研究が進められている予防法:人工骨や超音波治療の可能性

現在、歯根吸収のリスクをさらに低減させるためのアプローチが研究されています。 まだ研究段階のものも多いですが、将来的にはより安全な矯正治療につながるでしょう。

  • 人工骨の活用  歯を動かす先のあごの骨が薄いと、治療が難しいことがあります。  このようなケースで、骨を補うために「人工骨」を使う研究があります。  動物を対象とした研究のレビューが報告されています。  特定の種類の人工骨を使った場所へ歯を動かすと、  歯根吸収が少なくなる可能性があるとされています。  これは、歯が動く環境を整えることで、歯根への負担を減らせる可能性を示します。
  • 超音波治療の応用  骨折の治療などにも使われる、ごく弱い超音波を当てる治療法も注目されています。  超音波の刺激は、歯の周りの骨の作り替え(リモデリング)を活発にします。  また、炎症を調整する効果も期待されています。  これにより、歯の移動をスムーズにしながら、歯根吸収のような副作用を  抑えられるのではないかと考えられており、研究が進められています。

これらの技術は、まだ一般的に普及しているわけではありません。 しかし、矯正治療の安全性を高めるための研究が日々進んでいます。

歯根吸収が起きた場合の3つの対処法と歯の将来

矯正治療中に歯根吸収が見つかったと聞くと、とても不安になりますよね。 「このまま歯が溶けて、なくなってしまうのでは?」と心配になるかもしれません。

しかし、歯根吸収が確認されても、適切な対処を行えば大丈夫です。 多くの場合、歯の健康を守りながら治療を続けることが可能です。 大切なのは、リスクを早い段階で見つけ、状況に応じてすぐに対応することです。 ここでは、歯根吸収が起きた場合の対処法と、歯の将来について解説します。

対処法①:矯正力の調整または治療の一時中断

歯根吸収が見つかった場合、まず行うのが矯正でかける力の調整です。 歯根吸収は、歯を動かす力が強すぎることが原因の一つです。 また、特定の方向に過度な負担がかかることでも起こりやすくなります。

そのため、歯にかける力を弱めたり、力の方向を調整したりします。 こうすることで、歯の根にかかる負担を直接的に減らすことができます。 歯の根の周りにある、クッション役の「歯根膜」を休ませるのです。

具体的には、以下のような対応を行います。

  • 矯正でかける力の軽減  ワイヤー矯正なら、より弱い力を持つワイヤーに交換します。  マウスピース矯正なら、交換のペースをゆっくりにします。
  • 歯の動かし方の変更  歯の根に負担がかかりにくい、別の移動方法を検討します。
  • 治療の一時的なお休み  吸収が進んでいる場合は、矯正装置の力を一度なくします。  そして、2〜3ヶ月ほど歯を休ませる期間を設けることがあります。  この期間に、歯の根の周りの組織が回復するのを待ちます。

研究でも、歯を動かす力を厳密に管理することが重要だと示されています。 担当医がレントゲンなどで歯の状態を定期的に確認します。 そして、こうした細かい調整を行い、吸収の進行を防ぎます。 安全に治療を進めるために、とても大切なステップです。

対処法②:治療計画の見直しとゴールの再設定

力の調整や治療の休みだけでは、リスクが高いと判断されることもあります。 また、もともとの歯や骨の状態から、リスクが高い場合もあります。 このときは、治療計画そのものを見直すことが必要です。

これは、無理に最初のゴールを目指すことのリスクを避けるためです。 完璧な歯並びを追求するあまり、歯の寿命を縮めては意味がありません。 歯槽骨から歯の根が飛び出したり、歯ぐきが下がったりする危険もあります。

計画を見直す際は、患者さんと相談しながら以下の点を決めていきます。

  • 最終的な歯並びのゴールを変える  理想の歯並びを100点とすると、歯の安全を優先します。  そして、90点の歯並びを新しいゴールに設定する、といった調整です。  例えば、歯を大きく動かす予定だった部分の移動量を減らします。
  • 治療にかかる期間の変更  より弱い力で、さらにゆっくりと歯を動かすこともあります。  そのために、治療期間を少し延長する場合があります。
  • 歯を抜くかどうかの計画変更  歯を動かす距離を短くするため、抜歯をする計画に変更することもあります。  あるいは、その逆のケースもあります。

矯正治療では、見た目の美しさと同じくらい大切なことがあります。 それは、歯や歯ぐきの健康を、将来にわたって守ることです。 担当医とよく話し合い、あなたの希望と歯の安全性を考えましょう。 その上で、最適な治療のゴールを一緒に決めていくことが重要です。

対処法③:重度の場合の治療中止と歯の固定

これは、ごく稀なケースですが、知っておいていただきたい選択肢です。 歯根吸収がかなり進んでしまい、重度と判断された場合です。 これ以上治療を続けると、歯が抜ける危険性が非常に高くなります。 そのときは、矯正治療を中止するという判断をすることがあります。

歯根吸収が歯の寿命に与える影響と予後

「歯の根が短くなったら、その歯はもう長持ちしないの?」 このように心配される方も多いでしょう。 しかし、歯根吸収の程度によって、歯の将来(予後)は大きく異なります。

歯根吸収の程度 歯の寿命への影響 将来的な見通し(予後)
軽度
(2.5mm未満)
 ほとんど影響はないと考えられています。  多くの研究で、矯正終了後に吸収がさらに進むことはないと報告されています。
 適切なケアを続ければ、健康な歯と同じように維持できる可能性が高いです。
中等度  多少の影響は考えられますが、すぐに問題になることは稀です。  歯を支える根が短くなるため、歯周病が進行した場合などに、健康な歯よりも揺れやすくなる可能性があります。
 より丁寧な歯磨きや定期検診が重要になります。
重度
(4mm以上など)
 歯の寿命が短くなる可能性があります。  歯が衝撃に弱くなったり、硬いものを噛んだ時に痛みを感じたりすることがあります。
 将来的に歯を失うリスクは高まりますが、適切な管理でできるだけ長く維持することを目指します。

とても重要なのは、矯正治療が終われば、歯根吸収は止まるということです。 過去の長期的な調査でも、治療後に吸収が進んだという報告はほとんどありません。

ただし、短くなった歯の根にとって、新たな負担は避けなければなりません。 歯ぎしりや食いしばり、そして歯周病は大きなリスクになります。 歯を支える土台(骨)は同じでも、そこに埋まる杭(歯根)が短くなっています。 そのため、健康な歯よりも揺れに弱くなっている状態なのです。

矯正治療が終わった後も、定期的なメンテナンスを必ず受けてください。 そして、ご自宅での丁寧なケアを続けることが歯の寿命を延ばす、何よりの鍵となります。

参考文献

  1. Wang SM, He J, Chuo WY and Wu L. “Orthodontic tooth movement in alveolar bone augmentation area: A systematic review of animal studies.” International orthodontics 23, no. 4 (2025): 101031.
  2. Pascoal S, Monteiro F, Oliveira S, Simoni A, Carvalho Ó and Pinho T. “Biomodulation effects induced by ultrasound stimulation in periodontal cells implicated in orthodontic tooth movement: A systematic review.” Orthodontics & craniofacial research 28, no. 1 (2025): 54-66.
  3. Tang C, Han S, Wang S, Wei X and Zhang H. “Evaluation of anterior teeth crown-root morphology and alveolar bone structure in patients with closed deep overbite using cone beam computed tomography.” Scientific reports 14, no. 1 (2024): 24670.
  4. Lin W, Wu X, He W, Wang X, Gao Y and Dong W. “LncRNA XIST regulates osteoclast formation and promotes orthodontically induced inflammatory root resorption through miR-130b-3p/PTEN axis.” Biotechnology & genetic engineering reviews 40, no. 3 (2024): 2560-2576.
  5. He X, Zhou X, Cui Y, Li X, Zhou Y, Xia Y, Zhu M, Liu J and Mao L. “Comparative analysis of root resorption and alveolar remodeling in maxillary incisors during orthodontic-orthognathic surgical treatment of skeletal Class III malocclusion.” American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics 167, no. 5 (2025): 591-603.e6.

追加情報

[title]: Orthodontic tooth movement in alveolar bone augmentation area: A systematic review of animal studies.

骨増強領域における矯正歯移動:動物実験に関する系統的レビュー 【要約】

  • この系統的レビューは、歯槽骨増強後の最適な矯正歯移動(OTM)時期、使用される歯槽骨移植片の種類、および関連する動物モデルを評価することを目的とした。
  • PubMed、Web of Science、Cochrane Library、Scopus、およびグレイ文献データベースで、2014年1月1日から2024年11月30日までの研究を対象に系統的検索を行った。歯槽骨増強とOTMの併用に関する研究を選択し、画像または組織学的検査によってOTM速度、骨形成、および歯根吸収などの結果を評価した。動物実験では対照群が必要であった。言語制限は設けなかった。論文スクリーニングとデータ抽出は、2人のレビューアーが独立して行った。SYRCLEバイアスリスクツールを使用して研究の質を評価した。
  • 犬、ラット、マウス、ウサギを含む14件の動物実験が含まれた。移植片材料は、主に同種移植片、異種移植片、および人工骨から構成されていた。適用された矯正力は10gから150gの範囲であり、OTMは0〜3ヶ月間隔で行われた。方法論には、モデル測定、画像処理、および組織学的分析が含まれていた。
  • OTMは骨形成期に行うことができるが、歯槽骨移植片の使用は一般的にOTMを阻害する。人工骨は、歯根吸収が少ないと関連付けられている。動物モデルは、性別、年齢、欠損部位とサイズ、歯の移動の種類、および力の大きさを考慮して、ヒトの特徴を綿密に反映する必要がある。全体として、研究の質は最適ではなく、さらに適切に設計された動物実験とヒト実験が必要である。この系統的レビューはPROSPERO(CRD42025642198)に登録されている。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40449365

[quote_source]: Wang SM, He J, Chuo WY and Wu L. “Orthodontic tooth movement in alveolar bone augmentation area: A systematic review of animal studies.” International orthodontics 23, no. 4 (2025): 101031.

[title]: Biomodulation effects induced by ultrasound stimulation in periodontal cells implicated in orthodontic tooth movement: A systematic review.

歯の移動を促進する矯正歯科治療における超音波刺激による生体調節効果:系統的レビュー 【要約】

  • 矯正歯科治療における歯の移動を加速させることは、治療期間の短縮に繋がり、歯周病のリスク、歯根吸収、う蝕の発生を抑制する上で重要である。
  • 歯の移動を加速させる技術は、破骨細胞と骨芽細胞の活性を高めることで骨リモデリングを促進することを目的としており、外科的および非外科的手術法を含む。
  • 超音波治療は、多くの医療分野において高い治療効果が認められており、骨リモデリングと炎症現象の調節において有望な結果を示している。
  • 本系統的レビューは、歯の移動に関与する細胞における超音波刺激(US)の生物学的効果に関する、現在までのin vitroおよびex vivoの科学的証拠を収集および分析することを目的とする。
  • 本レビューはPRISMA 2020ガイドラインに従って実施された。PubMed、Scopus、Web of Scienceデータベースを用いて文献検索を行った。
  • 16本の論文が選定され、本レビューに含まれた。
  • レビューされた研究は、1.0および1.5 MHzのUSを30 mW/cm2で1日10〜30分、3〜14日間照射すると、破骨細胞の活性化を促進する効果があることを示唆している。
  • 一方、1.5 MHz、30〜90 mW/cm2のUSを1日5〜20分、5〜14日間照射すると、骨形成の活性化と分化を促進する可能性がある。
  • 過去の研究では、矯正歯科におけるUSの効果に関する証拠は様々であった。
  • 今後の動物実験では、推奨されるUSパラメータを用い、異なるプロトコルがどのように組織リモデリング経路に異なる影響を与えるかを調べる必要がある。
  • 本レビューから得られた知見は、最終的には臨床現場における歯の移動を加速させるためのUSの応用を促進するであろう。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39127913

[quote_source]: Pascoal S, Monteiro F, Oliveira S, Simoni A, Carvalho Ó and Pinho T. “Biomodulation effects induced by ultrasound stimulation in periodontal cells implicated in orthodontic tooth movement: A systematic review.” Orthodontics & craniofacial research 28, no. 1 (2025): 54-66.

[title]: Evaluation of anterior teeth crown-root morphology and alveolar bone structure in patients with closed deep overbite using cone beam computed tomography.

閉鎖性深覆咬合における前歯の冠根形態および歯槽骨構造の評価:コーンビームCTを用いた研究 【要約】

  • 本研究は、コーンビームCTを用いて閉鎖性深覆咬合患者における切歯領域の冠根形態および歯槽骨構造を調査し、性別と年齢による差異を比較した。
  • 2023年11月から2024年3月までの合肥口腔医院の患者から、Angle II級2分類の閉鎖性深覆咬合患者40名(C群)のCBCT画像を選定した。
  • 対照群として、正常咬合の個人20名(A群)とAngle II級1分類の患者20名(B群)を含めた。
  • CBCT画像から上顎および下顎前歯の冠根比、冠根角、歯槽骨構造を測定し、データを統計的に分析した。
  • 下顎側切歯に加えて、II級2分類群の上顎および下顎前歯の冠根比は、正常咬合群およびII級1分類群よりも高かった(P < 0.05)。
  • II級2分類群の上顎前歯の冠根角は、正常咬合群およびII級1分類群よりも小さかった(P < 0.05)。
  • 上顎中切歯の歯槽骨厚は比較的薄く、歯槽骨高さはII級2分類群で比較的高い。
  • 年齢と性別は、II級2分類群の前歯の長さと冠根角の変化に関連していた(P < 0.05)。
  • 閉鎖性深覆咬合の患者は、ほとんどの測定値において対照群と比較して有意な差を示す。
  • II級2分類の不正咬合を呈する患者は、前歯の過剰な内側移動を示し、顕著な冠根角、大きな冠根比、および唇側歯槽骨の減少が見られる。
  • 歯の移動を歯槽骨移動の安全範囲内に保つためには、トルクを厳密に制御し、適切な矯正力を用いて骨の窓形成、骨の欠損、歯肉退縮、歯根吸収のリスクを軽減することが重要である。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39433575

[quote_source]: Tang C, Han S, Wang S, Wei X and Zhang H. “Evaluation of anterior teeth crown-root morphology and alveolar bone structure in patients with closed deep overbite using cone beam computed tomography.” Scientific reports 14, no. 1 (2024): 24670.

[title]: LncRNA XIST regulates osteoclast formation and promotes orthodontically induced inflammatory root resorption through miR-130b-3p/PTEN axis.

LncRNA XISTは、miR-130b-3p/PTEN軸を介して破骨細胞の形成を調節し、矯正治療誘発性炎症性歯根吸収を促進する 【要約】

  • 本研究は、LncRNA XISTが破骨細胞の形成と矯正治療誘発性炎症性歯根吸収(OIIRR)に関与するメカニズムを調査することを目的とした。
  • 圧縮力(CF)誘導細胞モデルと矯正歯移動(OTM)ラットモデルを用いて、LncRNA XIST、miR-130b-3p、phosphatase and tensin homolog deleted on chromosome 10(PTEN)の発現、ならびに破骨細胞関連マーカー遺伝子と炎症因子のレベルを測定した。
  • ルシフェラーゼ活性とウェスタンブロットアッセイにより、LncRNA XIST、マイクロRNA-130b-3p(miR-130b-3p)、PTEN間の相互作用を調べた。
  • 病理学的切片を用いて、歯根吸収と破骨細胞の形成を分析した。
  • OTMラットモデルは、歯間距離の増加と歯根吸収窩の増加を特徴とするため、正常に構築された。
  • OTM群では、PTENとLncRNA XISTが過剰発現した。
  • メカニズム解析の結果、LncRNA XISTの過剰発現は、miR-130b-3pをスポンジングすることでPTENレベルを上昇させた。
  • LncRNA XISTの過剰発現は、miR-130b-3pをスポンジングし、PTENレベルを促進することで、炎症因子の分泌と陽性破骨細胞数を増加させたが、破骨細胞の分化を抑制した。
  • これらの結果は、LncRNA XISTがmiR-130b-3p/PTEN軸を介して破骨細胞の形成を調節し、OIIRRを悪化させることを示しており、LncRNA XISTはOIIRR治療の潜在的な標的となる可能性があることを示唆している。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37057740

[quote_source]: Lin W, Wu X, He W, Wang X, Gao Y and Dong W. “LncRNA XIST regulates osteoclast formation and promotes orthodontically induced inflammatory root resorption through miR-130b-3p/PTEN axis.” Biotechnology & genetic engineering reviews 40, no. 3 (2024): 2560-2576.

[title]: Comparative analysis of root resorption and alveolar remodeling in maxillary incisors during orthodontic-orthognathic surgical treatment of skeletal Class III malocclusion.

骨格性III級不正咬合に対する矯正外科治療における上顎切歯の歯根吸収と歯槽骨リモデリングの比較分析 【要約】

  • 本研究は、骨格性III級不正咬合患者において、固定式矯正装置(FA)とクリアアライナー(CA)を用いた治療における上顎切歯の歯根長と歯周の変化を、コーンビームCTを用いて後向き臨床研究として検討した。
  • 60人の患者を装置の種類によって2群に均等に分け、治療前、手術前矯正治療後、矯正外科治療後にコーンビームCTスキャンを取得。上顎切歯周囲の4レベル(歯頚部エナメル質セメント質接合部から3、6、9mm、および歯根頂レベル)における歯根長、垂直方向歯槽骨レベル、水平方向歯槽骨厚を測定し比較した。手術前矯正段階における上顎切歯の歯の移動も評価した。
  • 両群ともに上顎切歯の歯根長は減少したが、治療後のCA群の減少幅(1.09 ± 0.70 mm)はFA群(1.29 ± 0.73 mm)より小さかった。FA群では、手術前矯正段階において、口蓋側歯槽骨厚および垂直方向歯槽骨レベルの減少がより顕著であり、歯根の舌側移動も大きかった。手術後、両群ともに上前歯の唇側傾斜の増加が見られたが、FA群では主に歯根の舌側移動が、CA群では唇側傾斜移動が観察された。
  • FAとCAのいずれも歯根吸収と歯槽骨縁の骨吸収を引き起こす可能性があり、FA治療の方がより顕著な影響を与えることが示された。CAは歯根吸収の最小化と歯槽骨の完全性の維持において利点がある可能性がある一方で、上前歯のトルクコントロールはFAより劣る。矯正外科治療の全段階において、医原性悪化を防ぐための慎重な考慮が重要である。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39945678

[quote_source]: He X, Zhou X, Cui Y, Li X, Zhou Y, Xia Y, Zhu M, Liu J and Mao L. “Comparative analysis of root resorption and alveolar remodeling in maxillary incisors during orthodontic-orthognathic surgical treatment of skeletal Class III malocclusion.” American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics : official publication of the American Association of Orthodontists, its constituent societies, and the American Board of Orthodontics 167, no. 5 (2025): 591-603.e6.