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歯周病はどういった治療をするのか?
「歯周病ですね」——歯科医師からのその一言に、「これからどんな治療が始まるんだろう…」「痛いのかな…」と、不安で頭がいっぱいになっていませんか?歯周病を甘く見てはいけません。厚生労働省の調査によると、私たち成人が歯を失う原因の第1位は、むし歯ではなく、この歯周病なのです。
放置すれば歯が抜け落ちるだけでなく、心臓病や糖尿病といった全身の病気に繋がるリスクも潜んでいます。この記事では、あなたの歯周病がどの段階で、具体的にどんな治療が必要なのかを徹底解説。痛みを抑えるための工夫や費用など、様々な疑問にお答えし、あなたが安心して治療への一歩を踏み出すお手伝いをします。
歯周病の進行度別に解説する3つの基本治療
歯医者さんで「歯周病です」と告げられると、 「これからどんな治療をするのだろう?」 「治療は痛いのかな?」 と、様々な不安が頭をよぎるかもしれません。
治療内容を事前に知っておくことで、心の準備ができ、 安心して治療にのぞむことができます。 ここでは、歯周病の進み具合に合わせた 3つの基本的な治療法について解説します。
軽度歯周病:歯石取り(スケーリング)とブラッシング指導
歯周病の初期段階である「軽度歯周病」は、 歯ぐきに軽い炎症が起きている状態(歯肉炎)です。
歯みがきのときに出血することが主なサインですが、 まだ歯を支える骨への影響はほとんどありません。 この段階であれば、適切な治療とセルフケアで、 健康な歯ぐきに戻せる可能性が非常に高いです。
この段階での治療の柱は、2つあります。
- ブラッシング指導
お口の状態は一人ひとり異なるため、歯科衛生士が、 あなたに合った歯ブラシの選び方や当て方を指導します。 歯間ブラシやフロスの使い方も丁寧にお伝えします。 毎日の正しい歯みがきこそが、歯周病治療の基本であり、 再発を防ぐために非常に重要です。
- 歯石取り(スケーリング)
歯みがきで取りきれなかった歯垢(プラーク)は、 唾液の成分で固まって「歯石」という塊になります。 歯石の表面はザラザラしており、細菌の温床となります。 歯石は歯ブラシでは取れないため、スケーラーという 専用の器具を使って、超音波などで取りのぞきます。 歯の表面や歯ぐきの浅い部分の歯石を取るため、 痛みを伴うことは少ないとされています。 もし、少ししみる感覚があれば器具の強さを調整できます。 我慢せずに遠慮なくお伝えください。
中等度歯周病:歯ぐきの奥の歯石を取るSRP(スケーリング・ルートプレーニング)
歯周病が少し進んだ「中等度歯周病」になると、 炎症が歯ぐきの奥深くまで広がり始めます。 歯を支える骨(歯槽骨)が溶け始めている状態です。
歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が深くなり、 その奥の歯の根(歯根)にまで歯石が付着しています。この段階では、「SRP」という専門的な治療を行います。
SRPとは、「スケーリング・ルートプレーニング」の略です。 歯周ポケットの奥深く、歯根の表面についた歯石や汚染されたセメント質をきれいに取りのぞきます。
- スケーリング
歯周ポケットの奥にある歯石を、 専用の器具(キュレットスケーラー)で除去します。
- ルートプレーニング
歯石を取った後のザラザラした歯の根の表面を、 なめらかでツルツルに仕上げる処置です。 歯根面を滑らかにすることで、汚れの再付着を防ぎ、 歯ぐきが再び歯に引き締まってつきやすくなります。
歯ぐきの奥をきれいにするため、痛みを感じることがあります。 そのため、治療は歯ぐきに麻酔をしてから行います。 麻酔をすることで、治療中の痛みを大幅に和らげることができます。 治療は一度に全て行うのではなく、お口の中を いくつかのブロックに分けて、数回にわたって行います。
重度歯周病:歯周外科治療(フラップ手術)と歯周組織再生療法
さらに進行して「重度歯周病」になると、 歯を支える骨が半分以上溶けてしまい、 歯がグラグラしてくることもあります。
歯周ポケットが非常に深くなり、SRPだけでは 器具が届かず、汚れを完全に取りきることが困難です。 このような場合には、外科的な処置が必要になります。
- 歯周外科治療(フラップ手術)
麻酔をした後、歯ぐきをメスで切って開きます。 歯の根を直接目で確認しながら、SRPでは届かなかった 深い場所の歯石や、炎症で悪くなった組織を 徹底的にきれいにします。 その後、歯ぐきを元の位置に戻して縫い合わせます。
- 歯周組織再生療法
フラップ手術の際に、歯周病で失われた 歯を支える骨などの組織の再生を促す治療です。 特殊な膜や薬剤、骨を補う材料などを使います。 骨が再生しやすい環境を整えることで、 歯の土台の回復を目指します。 この治療は、全ての場合にできるわけではなく、 骨の失われ方など、お口の状態によって適応が決まります。 また、保険が適用されない自費診療となる場合があります。
外科的な処置のため、治療後には痛みや腫れが出ますが、 痛み止めや抗生物質をお出ししますのでご安心ください。
放置は危険!歯を失うリスクと全身疾患への影響
「歯ぐきから血が出るだけ」「まだ歯は痛くないから」 と、歯周病のサインを見過ごすのは大変危険です。厚生労働省の調査でも、大人が歯を失う原因の第1位は、 むし歯ではなく歯周病であると報告されています。
歯周病が進行すると、歯を支えているあごの骨が溶け、 支えを失った歯はグラグラになります。 そして最終的には、自然に抜け落ちてしまうのです。
さらに、歯周病はお口の中だけの病気ではありません。 歯周病菌や菌が出す毒素が、炎症を起こした歯ぐきの 血管から血液中に入り込み、全身に運ばれてしまいます。 そして、全身に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
歯周病と関係があるとされる全身の病気
| 病気の種類 | 歯周病との関係 |
| 糖尿病 | 歯周病は糖尿病の合併症の一つです。歯周病が悪化すると血糖値のコントロールが難しくなり、逆に糖尿病が歯周病を悪化させるという相互関係があります。 |
| 心臓病・脳梗塞 | 歯周病菌が血管内に入り込むことで、血管の壁に炎症を起こし、動脈硬化を進行させる一因となります。これにより、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める可能性が指摘されています。 |
| 誤嚥性肺炎 | ご高齢の方に多い病気です。お口の中の歯周病菌が、唾液や食べ物と一緒に誤って気管や肺に入ってしまうことで肺炎を引き起こします。 |
| 妊娠トラブル | 妊娠中の女性が歯周病にかかっていると、血中に入った歯周病菌の毒素が影響し、早産や低体重児出産のリスクが高まることがわかっています。 |
大切な歯を一本でも多く守るため、 そして、全身の健康を維持するためにも、 歯周病は早期に発見し、きちんと治療することが 非常に大切なのです。
歯周病治療の痛みを軽減する4つの工夫
治療の痛みを和らげる麻酔(表面麻酔)
歯周病の治療、特に歯ぐきの奥深くの歯石を取るSRPでは、 痛みを感じることがあります。 そこで、治療中の不快感をなくすために麻酔を使います。
しかし、「そもそも麻酔の注射が苦手…」という方も 少なくないでしょう。 その注射の痛みを和らげるために、 私たちは次のような工夫をしています。
表面麻酔(ひょうめんますい)
- どんなもの?
- 注射をする前に、歯ぐきに塗るジェル状やスプレー状の麻酔薬です。
- どんな効果があるの?
- 歯ぐきの表面の感覚を鈍らせて、麻痺させます。
- これにより、注射の針が刺さる時の「チクッ」とした痛みを
- ほとんど感じなくさせることができます。
歯石取りの痛みを抑えるための超音波スケーラーの出力調整
歯石取りでは、「超音波スケーラー」という器具がよく使われます。 これは、超音波による細かい振動で、歯に固くこびりついた 歯石を効率よく砕いて取りのぞく機械です。
しかし、この振動が歯に響くことで、 「キーン」という特有の音とともに、しみたり痛んだりする 不快感を感じることがあります。 特に、歯周病で歯ぐきが下がり、歯の根が露出している方や、 知覚過敏がある方は、痛みを感じやすくなります。
このような痛みを軽減するために、 歯科医院では患者さん一人ひとりに合わせて配慮しています。
- 出力の調整
超音波スケーラーは、振動の強さ(出力)を調整できます。 患者さんが痛みを感じる場合は、出力を一番弱い設定から始め、 様子を見ながら少しずつ調整することで、不快感を少なくします。
- 手用の器具との併用
痛みが強い部分や、特にデリケートな部分は、 昔ながらの手用の器具(ハンドスケーラー)を使います。 一本一本、指先の感覚で丁寧に歯石を取りのぞくことで、 振動による刺激を避けることができます。
治療中に少しでも痛みを感じたら、我慢する必要はありません。 手を挙げるなど、すぐに合図を送ってください。 あなたの感覚に配慮しながら、適切な方法で治療を進めます。
治療後の痛みや腫れを抑えるための痛み止めと注意点
歯ぐきの奥深くを治療した場合や、歯周外科手術の後は、 麻酔が切れると痛みや腫れが出ることがあります。 治療後の不快な症状をできるだけ軽くするために、 以下の点にご注意ください。
1. 痛み止めの服用
- 痛みが予想される治療の後には、痛み止め(鎮痛剤)が処方されます。
- ポイントは、痛みが本格的に強くなる前に服用することです。
- 「少し痛いかな?」と感じたタイミングで飲むと、
- 痛みの原因物質が作られるのを効率よく抑えることができます。
- 処方された薬がなくなっても痛む場合は、
- 自己判断で市販薬を使わず、まずは歯科医院にご連絡ください。
2. ご自宅での注意点 治療当日は、血の巡りが良くなる行動を避けることが、 痛みや腫れ、出血を悪化させないための重要なポイントです。
【治療後の注意点チェックリスト】
- ☐ 処方された薬(痛み止め・化膿止め)は、指示通りに飲む
- ☐ 頬の外側から、濡れタオルなどで優しく冷やす
- (氷で直接冷やすと、血行が悪くなりすぎて治りを妨げることがあります)
- ☐ 激しい運動やサウナ、長時間の入浴は避ける
- (血行が良くなり、痛みや出血の原因になります。当日はシャワー程度にしましょう)
- ☐ アルコール(お酒)は血管を広げる作用があるため控える
- ☐ 喫煙は血管を収縮させ、傷の治りを悪くするため控える
- ☐ 食事は、硬いものや香辛料など刺激の強いものを避ける
- ☐ 気になっても、指や舌で治療した部分を何度も触らない
治療前に知っておきたい期間・費用に関する5つのこと
歯周病の治療を受けると決まったとき、多くの方が 「どのくらいの期間がかかるの?」 「費用はいくらくらい?」 といった疑問や不安を感じるのは、ごく自然なことです。
治療は、お口の状態や生活にも関わる大切なことだからこそ、 事前に全体像を知って、安心してのぞみたいですよね。
ここでは、歯周病治療の期間や費用、治療中の注意点など、 安心して治療を始めるために知っておきたい5つのポイントを、 わかりやすく丁寧に解説していきます。
歯周病治療にかかる期間と通院回数の目安
歯周病治療にかかる期間や通院回数は、 歯周病がどのくらい進んでいるかによって大きく変わります。 ご自身の状態がどの段階にあたるのか、 一つの目安として参考にしてください。
| 進行度 | 主な治療内容 | 期間の目安 | 通院回数の目安 |
| 軽度 | ・歯石取り(スケーリング) ・歯磨き指導 |
1〜2ヶ月 | 2〜4回 |
| 中等度 | ・歯ぐきの奥の歯石取り(SRP) ・歯周ポケットの再検査 |
3〜6ヶ月 | 4〜8回 |
| 重度 | ・歯周外科治療(フラップ手術など) ・歯周組織再生療法など |
6ヶ月〜1年以上 | 定期的な通院が必要 |
軽度の場合 歯ぐきに軽い炎症がある段階です。 歯の表面についた歯石を取りのぞき、ご自宅での 正しい歯みがきの方法を身につけることが中心です。 比較的短い期間で治療が完了します。
中等度の場合 歯を支える骨が溶け始めている段階です。 歯ぐきの奥深く、歯根の表面についた歯石を 麻酔をして丁寧に取りのぞく「SRP」という処置が必要です。 お口の中をいくつかのブロックに分けて治療するため、 通院回数が多くなります。 治療後、歯ぐきの状態が改善したかを確認するための 検査期間も必要です。
重度の場合 骨が大きく溶け、歯がグラグラしている段階です。 SRPだけでは改善が難しく、歯ぐきを切開して 歯石を取りのぞく歯周外科治療が必要になることがあります。 外科処置の後は、傷口が治るまでの期間も必要になるため、 治療期間は長くなり、通院回数も増える傾向にあります。
再発予防に不可欠な定期メンテナンスの重要性と内容
歯周病は、治療が終わっても再発しやすい 「生活習慣病」の一つです。 せっかく治療できれいになったお口の状態を維持し、 再発を防ぐためには、治療後の「定期メンテナンス」が 非常に重要になります。
なぜ定期メンテナンスが必要なの? 歯周病の原因となる歯周病菌は、お口の中に常にいます。 毎日の歯みがきで汚れを落とすことは大切ですが、 歯ブラシの届きにくい場所には、細菌の塊である 「バイオフィルム」が再び作られてしまいます。
このバイオフィルムは、台所の排水溝のヌメリのようなもので、 強力に歯に付着しているため、ご自宅のケアだけでは 完全に取りのぞくことが難しいのです。 そのため、定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受ける必要があります。
定期メンテナンスの主な内容
- 歯周ポケットの検査
歯と歯ぐきの溝の深さを測り、炎症や出血がないかなど、 歯周病が再発していないかを細かくチェックします。
- プロによるクリーニング(PMTC)
専門の器具や機械を使って、歯石やバイオフィルムを 徹底的に除去し、歯の表面をツルツルに磨き上げます。
- セルフケア指導
磨き残しが多い部分などを一緒に確認し、 より効果的な歯みがきの方法などを改めてアドバイスします。
メンテナンスの頻度は、お口の状態によりますが、 一般的には3〜6ヶ月に1回が目安です。 治療の終わりは、健康な状態を維持するための 新しいスタート地点です。大切な歯を長く守るために、 定期メンテナンスを生活の一部にしていきましょう。
治療中の食事制限や日常生活での注意点
歯周病の治療、特に外科的な処置を受けた後は、 お口の中がデリケートな状態になっています。 傷の治りを良くし、トラブルを防ぐために、 食事や日常生活でいくつか注意していただきたい点があります。
食事に関する注意点
- 麻酔が効いている間
感覚が鈍っているため、頬や唇を噛んでしまうことがあります。 麻酔が完全に切れるまでは、食事を控えるようにしましょう。
- 痛みや腫れがあるとき
おかゆ、スープ、ヨーグルト、ゼリーなど、 あまり噛まなくても食べられる柔らかいものを選びましょう。 香辛料などの刺激物や、熱すぎる・冷たすぎるものは、 傷口を刺激することがあるため避けてください。
日常生活での注意点 治療当日は、血の巡りが良くなる行動を避けることが、 痛みや腫れ、出血を悪化させないための重要なポイントです。
- 喫煙
タバコは血液の流れを悪くし、傷の治りを遅らせます。 治療期間中は、できるだけ禁煙を心がけましょう。
- 飲酒
アルコールは血行を良くするため、痛みが出たり、 出血しやすくなったりします。特に治療当日は控えましょう。
- 激しい運動や長時間の入浴
飲酒と同様に血行が促進されるため、 治療当日はシャワー程度にしておきましょう。
- その他
治療した部分を指や舌で何度も触らないようにしましょう。 うがいは、強くぶくぶくするのではなく、 優しく口に含んで吐き出す程度にしてください。
これらの注意点は、治療内容によって異なります。 治療後に歯科医師や歯科衛生士から詳しい説明がありますので、 その指示に従うようにしてください。 もし、強い痛みや腫れが続くなど、不安なことがあれば 我慢せず、すぐに歯科医院へ連絡しましょう。
まとめ
今回は、歯周病の治療法について、進行度別の内容から費用、痛みへの配慮まで詳しく解説しました。
歯医者さんで歯周病と告げられると、不安な気持ちでいっぱいになるかもしれません。 しかし、治療法は一つではなく、あなたのお口の状態に合わせて段階的に進められます。 また、治療中の痛みをできるだけ和らげるための様々な工夫があることも、ご理解いただけたかと思います。
歯周病は、放置すれば歯を失うだけでなく全身の健康にも影響しますが、きちんと治療すれば改善できる病気です。 そして治療が終わった後も、再発を防ぐための定期的なメンテナンスが非常に大切になります。 不安なことは一人で抱え込まず、まずはかかりつけの歯科医師に相談し、二人三脚で大切な歯を守っていきましょう。