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ガミースマイルの治療について
思いっきり笑いたいのに、歯茎が見えるのが気になって、つい口元を手で隠してしまう…。そんな経験から、心から笑うことをためらっていませんか?笑ったときに上の歯茎が3mm以上見える状態は「ガミースマイル」と呼ばれ、実は見た目だけでなく、口臭や歯周病のリスクを高める可能性も指摘されています。
その原因は、歯並びや歯の大きさ、くちびるを動かす筋肉の力、あごの骨格など人によって様々です。ご自身の原因を正しく知ることが、コンプレックスを解消するための最も大切な第一歩となります。この記事では、原因を探るセルフチェックからあなたに合った治療法までを詳しく解説します。もう悩まずに、自信あふれる笑顔を取り戻しましょう。
まずはセルフチェックから ガミースマイルの主な原因3つ
「みんなと笑い合いたいのに、歯茎が見えるのが気になって、つい口元を手で隠してしまう」。 このようなお悩みで、心から笑うことをためらっていませんか。
笑ったときに上の歯茎が目立って見える状態を「ガミースマイル」と呼びます。 医学的な定義はありませんが、一般的に笑った際に歯茎が3mm以上見える場合、ガミースマイルと考えることが多いです。
このお悩みの原因は一つだけではありません。 主に「歯と歯茎」「唇の動き」「あごの骨格」という3つの要素が、単独で、あるいは複数組み合わさって影響しています。 ご自身の状態がどのタイプに近いかを知ることは、お悩みを解決する大切な第一歩になります。
あなたはどのタイプ?3つのセルフチェック項目
鏡の前で「イーッ」と口を横に広げたり、にっこりと自然に笑ったりしながら、ご自身の口元をじっくり観察してみましょう。 どの項目に当てはまるか、一つひとつ確認してみてください。
【ガミースマイル セルフチェックリスト】
- □ 上のくちびるの動きをチェック
- 笑ったとき、上のくちびるがグッと上に引き上げられますか?
- くちびるが内側に巻き込まれるように、薄くなっていませんか?
- →「はい」が多い方は、次の「原因2 上唇の動きすぎ」が関係しているかもしれません。
- □ 歯の大きさと歯茎をチェック
- 上の前歯の縦の長さが、他の歯と比べて短く感じますか?
- (健康的な前歯の縦の長さは、およそ10~11mmが目安です)
- 歯茎が歯に覆いかぶさっていて、歯が小さく見えませんか?
- →「はい」が多い方は、次の「原因1 歯と歯茎の位置の問題」が関係しているかもしれません。
- □ お顔全体のバランスをチェック
- 鼻の下から上くちびるまでの距離が、長く感じますか?
- 上の歯全体が、やや下の方に位置しているように見えますか?
- →「はい」が多い方は、次の「原因3 骨格の問題」が関係しているかもしれません。
原因1 歯と歯茎の位置の問題(歯並び・歯の大きさ)
歯や歯茎の状態そのものが、ガミースマイルの原因になっているケースです。 これには、いくつかのパターンが考えられます。
一つ目は、歯が歯茎の中に埋もれてしまっている状態です。 歯が成長する過程で完全に生えきらず、一部が歯茎に覆われたままだと、歯の見える面積が小さくなります。 その結果、相対的に歯茎の面積が広く見えてしまうのです。
二つ目は、歯並びが原因となる場合です。 例えば、上の前歯が前方に突き出している、いわゆる「出っ歯」の状態だと、歯が上くちびるを押し上げてしまいます。 そのため、くちびるがめくれ上がりやすくなり、歯茎が見えやすくなるのです。 また、歯が生えている位置自体が、通常より下にある場合も、くちびるで歯茎を覆いきれず、ガミースマイルの原因となります。
原因2 上唇の動きすぎ(上唇挙筋の発達)
歯並びや骨格には大きな問題が見られないのに、笑うと歯茎が目立つ。 この場合、くちびるを動かす筋肉の働きが強い可能性があります。
私たちの顔には、表情を作るための筋肉がたくさんあります。 その中で、上くちびるを上に引き上げる働きを持つのが「上唇挙筋(じょうしんきょきん)」などの筋肉群です。 この筋肉の力が生まれつき強いと、笑ったときにくちびるが必要以上に引き上げられてしまい、歯茎が大きく見えてしまいます。
このような筋肉の過剰な働きが原因の場合、筋肉の緊張を和らげる治療が選択肢の一つとなります。 最近の研究では、筋肉の緊張を緩めるボツリヌストキシンという薬剤を、上唇挙筋そのものや、その近くにある「ヨンセイポイント」という部分に注射する方法が検討されています。 ある研究報告によると、どちらの部位への注射もガミースマイルの改善に有効であり、効果に大きな差はなかったと結論づけられています。 これは、治療の選択肢が複数あることを示唆するものです。
原因3 骨格の問題(上顎骨の過成長)
ガミースマイルの根本的な原因として、あごの骨の形や大きさが関係していることがあります。 具体的には、上のあごの骨である「上顎骨(じょうがくこつ)」が、成長の過程で縦の方向に長く発達しすぎた状態です。
上顎骨そのものが縦に長いと、顔全体のバランスの中で、歯と歯茎の位置が標準よりも下にきてしまいます。 そのため、くちびるの大きさや筋肉の動きが正常であっても、歯茎を完全に覆うことができず、少し笑っただけで歯茎が見えやすくなるのです。
この原因は遺伝的な要因も大きいですが、それだけではありません。 成長期に鼻が詰まっていて口で呼吸する癖があったり、柔らかいものばかり食べてあまり噛まなかったりする生活習慣が、あごの健やかな発達に影響を与える可能性も指摘されています。
ガミースマイルが見た目以外に与える影響とは?見た目以外のデメリット(口臭・歯周病リスク)
ガミースマイルは、見た目のコンプレックスとして悩む方が多いですが、実は「お口の健康」にも影響を及ぼす可能性があります。 見た目だけの問題だと考えずに、次のような健康上のデメリットも知っておくことが大切です。
- 口内の乾燥(ドライマウス)
- ガミースマイルの方は、くちびるが閉じにくく、無意識のうちにお口がポカンと開いていることが少なくありません。
- これにより口の中が乾燥し、お口を守る「唾液」の大切な働きが弱まってしまいます。
- 唾液の働きが弱まると起こること
- 虫歯・歯周病リスクの上昇
- 唾液には、お口の中の食べかすや細菌を洗い流す「自浄作用」があります。乾燥するとこの作用が低下し、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすくなります。
- 口臭の悪化
- お口の中で細菌が増えることで、口臭の原因となるガスが発生しやすくなります。
- 着色汚れ(ステイン)
- 歯の表面が乾燥すると、コーヒーやお茶、カレーなどの色が付きやすくなります。
- 虫歯・歯周病リスクの上昇
このように、ガミースマイルは将来のお口のトラブルにつながる可能性があります。 お口の健康を守るという観点からも、一度専門家である歯科医師に相談してみることをお勧めします。
あなたに合う治療法は?原因別に見る5つの治療法
「笑うと歯茎が見える」というお悩みは、決して珍しいものではありません。 しかし、ガミースマイルと一括りにせず、その原因を正しく知ることが重要です。
原因は、くちびるを動かす筋肉、歯や歯茎の状態、あごの骨格など様々です。 そのため、ご自身の原因に合った治療法を選ぶことが、ご自身に合った治療法を見つけるために。 ここでは、主な原因に対応する5つの代表的な治療法を詳しく解説します。 あなたに合う方法を見つけるための、道しるべとしてご活用ください。
ボトックス注射(上唇の筋肉を緩める)の効果と持続期間
上くちびるを上げる筋肉の力が強いことが原因の方に適した治療法です。 この治療では「ボツリヌストキシン」というお薬を使い、筋肉の緊張を和らげます。 筋肉の働きを一時的に緩めることで、笑った時のくちびるの上がりすぎを抑えます。 その結果、歯茎が見える範囲を自然に狭めることができるのです。
歯列矯正(ワイヤー・マウスピース)で歯並びを整える
歯並びや歯の位置が原因で、ガミースマイルになっている場合に有効です。 例えば、上の前歯が下の歯に深くかぶさる「過蓋咬合(かがいこうごう)」。 あるいは、前歯が前方に突き出したいわゆる「出っ歯」の状態。 このような場合に、歯を正しい位置へ動かし、歯茎の見え方を改善します。
【主な矯正の方法】
- ワイヤー矯正 歯の表面にブラケットという装置を付け、ワイヤーを通して歯を動かします。 細かな調整が可能で、多くの症例に対応できる歴史のある治療法です。
- マウスピース矯正 透明なマウスピースを定期的に交換し、少しずつ歯を動かしていきます。 目立ちにくいのが大きな利点ですが、対応できる症例には限りがあります。
- 歯科矯正用アンカースクリューの併用 あごの骨に小さなネジを埋め込み、それを固定源として歯を動かす方法です。 このネジを使うと、歯を効率よく上方向へ引き上げる「圧下」が可能です。 歯の位置そのものが下にあることが原因の場合、特に効果的な方法です。
この治療は、見た目の改善だけでなく、かみ合わせの機能も整えられます。 お口全体の健康に貢献できる点が、大きなメリットと言えるでしょう。 ただし、治療期間は数ヶ月から数年単位と、比較的長くかかります。
歯冠長延長術(歯肉切除)で歯茎のラインを調整
歯の大きさは正常なのに、歯茎が多くかぶさっている方向けの治療法です。 歯茎に隠れた部分を露出させ、歯が短く見える状態を改善します。 余分な歯茎をレーザーやメスで切除し、本来の歯の長さを取り戻すのです。
【治療のステップ】
- カウンセリングと精密検査 歯と歯茎の状態を正確に診断し、切除する範囲を決定します。
- 局所麻酔 痛みを伴わないように、治療する部分にしっかりと麻酔を効かせます。
- 歯肉の切除 理想的な歯茎のラインになるよう、慎重にデザインして切除します。
- (必要な場合)歯槽骨整形 歯を支える骨の形を少し整えることで、後戻りを防ぎます。 これにより、より安定的で美しい仕上がりを目指します。
治療は比較的短時間で完了し、一度の治療で長期的な効果が期待できます。 術後は少し腫れたり、しみたりしますが、数日~1週間程度で落ち着きます。 ただし、切除できる歯茎の量には限界があることを知っておく必要があります。
上唇粘膜切除術で後戻りの少ない効果を目指す
上くちびるの内側にある粘膜を一部切除し、縫い合わせる外科手術です。 これにより、上くちびるが物理的に上がりすぎないように可動域を制限します。 筋肉の力が強い場合や、くちびる自体が短い場合にも効果が期待できます。
【ボトックス注射との違い】 ボトックス注射は筋肉の「働き」を一時的に弱めるアプローチです。 一方、この手術は上くちびるの「動く範囲」そのものを狭めます。 そのため、効果が長期間持続し、後戻りの心配が少ない点が大きな利点です。
手術は局所麻酔で行い、傷跡はくちびるの内側なので外からは見えません。 定期的な通院が難しい方や、一度で長く続く効果を望む方に適しています。
骨切り手術(外科矯正)で骨格から根本改善
上あごの骨の過剰な成長など、骨格そのものに原因がある方向けの治療です。 重度のガミースマイルを、根本から改善するための本格的な外科手術です。 一般的に「ルフォーⅠ型骨切り術」と呼ばれる方法が用いられます。
【治療の概要】 この手術では、お口の中から上あごの骨(上顎骨)を水平に切ります。 そして、骨を適切な長さや位置(上方向や後方)へ移動させます。 移動させた骨は、小さな金属のプレートとネジでしっかりと固定します。
【治療の長期的な流れ】
- 術前矯正(約半年~1年半) 手術後のかみ合わせが安定するよう、手術の前に歯列矯正を行います。
- 入院・手術(入院期間:約1~2週間) 全身麻酔のもとで手術を行います。
- 術後矯正(約半年~1年) 移動させたあごの位置に合わせ、かみ合わせの最終調整を行います。
全身麻酔を伴う大がかりな手術で、ダウンタイムも長くなります。 しかし、骨格のバランスを根本的に整えることが期待できる代表的な方法です。 また、「顎変形症」と診断された場合は、保険が適用されることもあります。 顔全体の印象を大きく改善できる可能性を秘めた治療法です。
後悔しない治療のために知っておくべき3つのポイント
ガミースマイルの治療を考え始めると、期待と同時に不安も感じますよね。 「どの治療が自分に合っているの?」「もし失敗したらどうしよう…」。 そんな気持ちになるのは、ごく自然なことです。
後悔のない治療を選ぶために、何よりも大切なのは、ご自身の状態を知ること。 そして、信頼できる専門家と一緒に、納得のいく治療計画を立てることです。 これからお話しする3つのポイントを押さえ、理想の笑顔への一歩を踏み出しましょう。
- 診療科の選び方
- 費用のこと
- カウンセリングで聞くべきこと
これらは、あなたにとって最適な治療を見つけるための、大切な道しるべになります。
歯科?美容外科?症状に合わせた診療科の選び方
ガミースマイルの治療は、原因によって相談すべき専門家が異なります。 原因は一つとは限らず、複数の要素が組み合わさっていることも少なくありません。
診療科 | 主な治療対象となる原因 | 代表的な治療法 |
---|---|---|
歯科・矯正歯科 | ・歯が小さい、短い ・歯並びが乱れている(出っ歯など) ・歯が下の位置に生えている |
・歯列矯正(ワイヤー・マウスピース) ・歯冠長延長術(歯肉切除) |
美容外科・美容皮膚科 | ・上くちびるを上げる筋肉の力が強い | ・ボトックス注射 ・上唇粘膜切除術 |
口腔外科 | ・上あごの骨が縦に長いなど、骨格に問題がある | ・骨切り手術(外科的矯正治療) |
まとめ
今回は、ガミースマイルの原因と、それに応じた様々な治療法についてご紹介しました。
「歯茎が見えるのが気になって、心から笑えない」というお悩みは、決して特別なことではありません。 大切なのは、その原因が歯並びや唇の筋肉、骨格など人それぞれであり、解決策も一つではないということです。
だからこそ、ご自身で抱え込まず、まずは専門家によるカウンセリングで原因を正確に知ることが、理想の笑顔を目指すための大切なステップになります。
参考文献
- Gong X, Tang HN, Zhang AR, Wang Z, Tang ZH, Han XF and Su JZ. Application of Botulinum Toxin at the Yonsei Point for the Treatment of Gummy Smile: A Randomized Controlled Trial. Plastic and reconstructive surgery 153, no. 4 (2024): 711e-721e.
追加情報
[title]: Application of Botulinum Toxin at the Yonsei Point for the Treatment of Gummy Smile: A Randomized Controlled Trial.
ガミースマイルの治療におけるヨンセイポイントへのボツリヌストキシンの応用:無作為化比較試験 【要約】
- 背景: ガミースマイルの治療において、ボツリヌストキシンAの注射などの低侵襲な処置の需要が年々増加しています。しかし、ボツリヌストキシンAの最適な注射部位については議論があります。本研究では、ヨンセイポイントへのボツリヌストキシンAの注射がガミースマイルの治療にどれだけ効果的かを調査しました。
- 方法: 健康なガミースマイル(前歯の歯肉が3.0mm以上露出する)の患者を対象に、二重盲検のシングルサイト無作為化比較試験を行いました。実験群ではヨンセイポイントにボツリヌストキシンA 6 Uを投与(右ヨンセイポイントに3 U、左ヨンセイポイントに3 U)、対照群では両側の上唇挙筋内に同じ量を投与しました。患者はベースライン時と注射後4週間、12週間、24週間、48週間の計測をデジタルバニアキャリパーを用いて行いました。
- 結果: 合計49人の参加者が登録されました。前方および両側の歯肉露出は4週間、12週間、24週間で減少しました(P ≤ 0.05)、そして48週間において両群ともベースラインに戻りました。これらの時間点では群間に差はありませんでした。患者の満足度の向上は有意であり、副作用はほとんど観察されませんでした。
- 結論: ガミースマイルの治療において、ヨンセイポイントと上唇挙筋内の両方がボツリヌストキシンAの注射部位として使用できます。 【クリニカル・クエッション/エビデンスのレベル】 治療的研究、Iレベル 【著作権情報】 Copyright © 2023 by the American Society of Plastic Surgeons. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37166037
[quote_source]: Gong X, Tang HN, Zhang AR, Wang Z, Tang ZH, Han XF and Su JZ. “Application of Botulinum Toxin at the Yonsei Point for the Treatment of Gummy Smile: A Randomized Controlled Trial.” Plastic and reconstructive surgery 153, no. 4 (2024): 711e-721e.