TEL03-6455-7010矯正相談受付中

WEB予約

ブログ

インプラントを考えているけど、骨が足りないと断られてしまった。本当に治療できないの?

インプラント治療を希望したものの、「顎の骨が足りない」と歯科医師に告げられ、治療を諦めていませんか?実は、抜歯後1年で骨の幅が約25%も減少するなど、骨が痩せてしまうのは決して珍しいことではありません。しかし、だからといってインプラントができないと決まったわけではないのです。

現在の歯科医療では、骨を増やす「骨造成」や特殊なインプラントなど、様々な解決策が生まれています。この記事では、骨が足りなくなる根本原因から、治療を諦めかけていた方でも再び噛めるようになる5つの具体的な方法まで、専門家の視点で徹底解説します。あなたに合った治療法を見つけるための、確かな一歩となるはずです。

なぜ骨が足りないとインプラントができないの?主な原因3つと骨の重要性

「インプラント治療をしたいのに、骨が足りないと断られてしまった…」 そうお聞きになり、治療を諦めかけている方もいらっしゃるかもしれません。

インプラント治療は、失った歯の機能と見た目を取り戻すための、有効な選択肢の一つです。 しかし、成功のためには土台となる顎の骨が十分にあることが非常に重要です。 骨が足りない状態では、インプラントをしっかりと支えることができません。 その結果、将来的にインプラントが抜け落ちるなどの問題が起きる可能性が高まります。

しかし、なぜ大切な顎の骨が足りなくなってしまうのでしょうか。 ここでは、インプラント治療における骨の重要性と、骨が痩せてしまう主な原因について、現場の医師の視点から詳しく解説していきます。

インプラントが骨にしっかり固定される仕組み(オッセオインテグレーション)

インプラントが天然の歯と同じようにしっかりと固定され、強く噛むことができるのは、「オッセオインテグレーション」という現象のおかげです。 これは、インプラントの材料であるチタンと顎の骨が、顕微鏡レベルで直接的かつ強固に結合することを指します。

この結合によって、インプラントは顎の骨と一体化します。 そして、食事の際に加わる強い力にも耐えることができる、歯の「根」の役割を果たすのです。 このオッセオインテグレーションを確実に得るためには、インプラントを完全に覆うだけの十分な骨の量(高さと厚み)が不可欠です。

【十分な骨が必要な理由】

  • 初期固定のため
    • 手術で埋め込んだインプラントが骨と結合するまでの間、動かないように安定させるために必要です。
  • 長期的な安定のため
    • 噛む力や歯ぎしりなど、長期間にわたって加わる様々な力からインプラントを守り、安定性を維持するために重要です。
  • 見た目の美しさのため
    • インプラント周囲の骨が十分にあることで、歯ぐきのラインも自然で美しい状態に保たれます。

さらに近年の研究では、この骨との結合に加え、もう一つ重要な要素が指摘されています。 それは、インプラント周囲の歯肉などの「軟組織」が、インプラントにしっかりと結合することです。 骨という硬い組織と、歯肉という軟らかい組織の両方が健康な状態でインプラントを支えることで、細菌の侵入を防ぎ、長期的な成功につながることがわかってきました。

顎の骨が痩せてしまう原因1 歯周病による骨の吸収

顎の骨が痩せてしまう最も一般的な原因の一つが、歯周病です。 歯周病は、お口の中の細菌が引き起こす感染症であり、自覚症状が少ないまま進行することが多い「静かなる病気」です。

歯周病によって骨が溶かされる仕組みは、以下の通りです。

  1. 歯と歯ぐきの境目にプラーク(歯垢)が溜まり、その中で歯周病菌が増殖します。
  2. 細菌が出す毒素によって、歯ぐきに炎症が起こります(歯肉炎)。
  3. 炎症がさらに進行すると、体を守ろうとする防御反応が働きます。
  4. この防御反応が、細菌のすみかとなっている歯の周りの組織、つまり歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かしてしまうのです。

この骨の吸収が進むと歯がぐらつき、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。 そして、歯を失った後には、インプラントを埋め込むための土台となる骨も失われた状態になってしまうのです。 また、口腔内の細菌感染は、インプラント治療後の「インプラント周囲炎」という合併症の大きな原因にもなります。 治療の成否に大きく関わるため、治療前にお口の中を清潔な状態に整えることが欠かせません。

【歯周病のセルフチェックリスト】

  • 朝起きたとき、口の中がネバネバする
  • 歯みがきの時に歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが赤く腫れている、またはブヨブヨしている
  • 硬いものが噛みにくくなった
  • 口臭が気になると家族や他人に指摘された
  • 歯と歯の間にすき間ができて、食べ物が挟まりやすくなった
  • 歯が長くなったように見える(歯ぐきが下がった)

これらのサインに一つでも心当たりがある場合は、症状がなくても歯周病が進行している可能性があります。 早めに歯科医院で検査を受けることをお勧めします。

顎の骨が痩せてしまう原因2 抜歯後の長期間放置

歯を失った後、その場所を治療せずに長期間放置することも、顎の骨が痩せる大きな原因となります。 私たちの体の骨は、適度な刺激が加わることでその密度や量を維持する性質を持っています。 顎の骨の場合、「噛む」という行為が、骨の健康を保つための重要な刺激になります。

歯がある状態では、噛む力は歯の根を通じて顎の骨に伝わります。 この刺激によって骨の代謝が促され、健康が保たれます。 しかし、歯が抜けてしまうと、その部分の骨には刺激が全く伝わらなくなります。 すると、体は「この骨はもう必要ない」と判断し、骨を徐々に吸収して痩せさせてしまうのです。 これは「廃用性萎縮(はいようせいいしゅく)」と呼ばれる、体の正常な反応です。

一般的に、抜歯後1年で骨の幅は約25%、高さは数ミリ減少するともいわれています。 骨の吸収は時間が経つほど進行するため、「いずれインプラントを」と考えている場合でも、放置期間が長引くほど治療の難易度が上がってしまいます。 歯を失ったらできるだけ早く歯科医師に相談することが、将来的な治療の選択肢を狭めないためにも重要です。

顎の骨が痩せてしまう原因3 合わない入れ歯による圧迫

現在入れ歯を使用している場合も、顎の骨が痩せる原因となることがあります。 特に、長年使用して合わなくなった入れ歯や、保険適用のプラスチック製の入れ歯には注意が必要です。

入れ歯は、インプラントのように骨に直接固定されているわけではありません。 歯ぐきの上に乗っている状態のため、噛む力は歯ぐきを通して、その下の顎の骨に圧迫する力として伝わります。 適切に調整された入れ歯であれば、力は広範囲に分散されます。 しかし、合わない入れ歯を使い続けていると、特定の部分に過度な圧力がかかり続けます。

この慢性的な圧迫は、歯ぐきの下の骨の血流を悪化させ、骨の吸収を加速させてしまうのです。

  • 入れ歯がガタついて安定しない
  • 食事中に特定の場所が痛む
  • 入れ歯と歯ぐきの間に食べ物が頻繁に挟まる

このような症状がある場合、それは単に不快なだけでなく、大切な顎の骨が痩せていっているサインかもしれません。 入れ歯は消耗品であり、お口の中の状態も日々変化していきます。 ご自身の骨を守るためにも、定期的に歯科医院で調整を受けることが非常に大切です。

骨が足りなくても諦めないで!主なインプラント治療法5選

「インプラント治療をしたいけれど、骨が足りないため難しい」 歯科医師からそう告げられ、治療を諦めかけている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、現在の歯科医療は日々進歩しています。 顎の骨の状態に合わせて、様々な治療法が開発されているのです。 骨が足りないからといって、すぐに諦める必要はありません。

骨の量を増やすための「骨造成手術」という方法があります。 また、骨を増やさなくても治療できる特殊なインプラントも存在します。 ここでは、代表的な5つの治療法を、現場の医師の視点から詳しく解説します。 ご自身の状況と照らし合わせながら、可能性を探っていきましょう。

①GBR法(骨誘導再生法)で骨の厚みや高さを補う

GBR法(Guided Bone Regeneration:骨誘導再生法)は、インプラントを埋め込むのに必要な骨の「厚み」や「高さ」が部分的に足りない場合に行われる、代表的な骨造成手術です。 歯周病や抜歯後の骨吸収によって失われた骨を、ご自身の体の再生能力を利用して回復させます。

GBR法の仕組み

  1. 骨が不足している部分の歯ぐきを、開きます。
  2. インプラントを埋め込む予定の場所に、骨のもとになる「骨補填材」を置きます。
  3. その上から「メンブレン」という特殊な人工膜で覆います。
  4. 歯ぐきを縫い合わせて閉じ、骨が再生するのを待ちます。

このメンブレンは、再生の邪魔になる歯ぐきなどの軟らかい組織が入り込むのを防ぐ「壁」の役割を果たします。 メンブレンで守られた空間の中で、骨補填材を足場にして、ゆっくりと新しい骨が作られていくのです。

この治療法を支えているのが、近年の組織工学の目覚ましい進歩です。 用いられる骨補填材やメンブレンは、単に隙間を埋めるだけではありません。 体の組織再生を積極的に助ける「生体材料(バイオマテリアル)」が使われます。 これらの材料は、体へのなじみやすさ(生体適合性)に優れています。 また、骨が再生した後は、体内に吸収されてなくなる性質(生分解性)を持つものも開発されており、治療の安全性と効果を高めています。 骨が十分に再生されるまでには、通常4ヶ月から6ヶ月ほどの期間が必要です。

GBR法が適しているケース
・インプラントを埋めるには骨の「厚み」や「高さ」が少し足りない
・歯周病で部分的に骨が溶けてしまった
・抜歯後に骨が痩せてしまい、インプラントを埋めるには幅が足りない
メリット デメリット
・多くの症例に対応できる ・骨が再生するまで時間がかかる
・ピンポイントで必要な量の骨を増やすことができる ・別途、外科的な処置が必要になる
・インプラント治療の成功率を高められる ・メンブレンが感染を起こすリスクがある

②サイナスリフトで上顎の奥歯部分の骨を増やす

サイナスリフトは、上の顎の奥歯(上顎臼歯部)の骨が広範囲にわたって薄い場合に行われる骨造成手術です。 上の奥歯の上部には、「上顎洞(じょうがくどう)」または「サイナス」と呼ばれる、鼻とつながっている大きな空洞があります。

歯を失って長期間放置すると、この空洞が下方に拡大してくることがあります。 その結果、インプラントを埋め込むための骨の高さが、著しく失われてしまうのです。 サイナスリフトは、この上顎洞のスペースを利用して骨を増やす、有効な治療法の一つです。

手術では、歯ぐきの横側からアプローチします。 そして、上顎洞の底にある「シュナイダー膜」という薄い粘膜を、破らないように慎重に持ち上げます。 そこにできた空間に骨補填材を詰め、骨の再生を待ちます。 この骨補填材も、組織の構造的な再建を促す生体材料です。 骨の量が大幅に足りない場合(5mm以下など)に適しており、10mm以上の高さを確保することも可能です。

サイナスリフトが適しているケース
・上の奥歯部分の骨の高さが5mm以下など、大幅に足りない
・複数のインプラントを上顎の奥歯に入れたい
・加齢や歯周病により、広範囲で上顎の骨が吸収されてしまった
メリット デメリット
・広範囲にわたって、大幅に骨の高さを増やすことができる ・外科手術の範囲が広く、体への負担が比較的大きい
・安定したインプラント治療の土台を強固に作れる ・治療期間が長くなる傾向がある(約半年~1年)
・多数歯の欠損にも対応できる ・術後に鼻血が出たり、鼻が詰まったりすることがある

③ソケットリフトで上顎の骨を少しだけ増やす(体への負担が少ない方法)

ソケットリフトも、サイナスリフトと同様に上顎の奥歯部分の骨を増やす治療法です。 しかし、より体への負担が少ないという大きな特徴があります。 増やす骨の量が比較的少ない(数ミリ程度)場合に適用されます。

サイナスリフトが歯ぐきの横からアプローチするのに対し、ソケットリフトは異なります。 インプラントを埋め込むために開けた穴(抜歯した穴など)から直接アプローチします。 特殊な器具を使って、上顎洞の底にあるシュナイダー膜を、慎重に押し上げていきます。 そして、持ち上げてできたわずかな隙間に骨補填材を入れ、インプラントの埋め込みと同時に行うことが多いです。

サイナスリフトとソケットリフトの比較

項目 ソケットリフト サイナスリフト
適応 増やす骨の高さが少ない場合(目安:4mm未満) 増やす骨の高さが多い場合(目安:4mm以上)
手術の傷口 小さい(インプラントを入れる穴のみ) 大きい(歯ぐきの横を切開)
体への負担 少ない 比較的大きい
治療期間 短い(インプラント埋入と同時に行うことが多い) 長い(骨造成を先に行い、再生を待つ場合がある)
難易度 術野が狭く、膜の状態を直接確認できないため高い技術が必要 術野が広く、膜を直視下で剥離できるため、より丁寧な処置が可能です。

ソケットリフトは手術の傷が小さく、術後の腫れや痛みが少ない傾向にあります。 そのため、患者さんの負担を軽減できるメリットがあります。 ただし、増やせる骨の量には限界があるため、CT撮影などで骨の状態を正確に診断した上で、最適な方法を選択することが重要です。

④骨を増やさないショートインプラントという選択肢

骨造成手術にはどうしても抵抗がある、という方もいらっしゃるでしょう。 また、持病などの理由で外科手術による体への負担をできるだけ避けたい方もいます。 そのような場合には、「ショートインプラント」という選択肢があります。

これは、その名の通り、通常のインプラント(長さ10mm以上が一般的)よりも短い、長さが6mm~8mm程度のインプラントを用いる治療法です。 骨の「高さ」が足りない場合でも、インプラントが骨の中に完全に収まるのであれば、骨を増やす手術をせずに治療を進められる可能性があります。

特に、下顎の奥歯の下には、下歯槽神経という太い神経や血管が通っています。 骨の高さが足りない場合、この神経を傷つけるリスクがあるため、骨造成が難しいケースがあります。 ショートインプラントは、そのような場合にも有効な選択肢となり得ます。 ただし、長さが短い分、骨と接する面積が少なくなるという欠点があります。 そのため、それを補うだけの十分な骨の「幅」や「硬さ(骨質)」が必要になるなど、適用できる条件が限られます。

ショートインプラントが適しているケース
・骨の「高さ」は足りないが、「幅」や「質」は良好な場合
・下顎の神経までの距離が近いなど、骨造成のリスクが高い場合
・外科手術の負担を軽減したい場合
メリット デメリット
・骨造成手術が不要なため、体への負担が少ない ・適用できる症例が限られる
・治療期間を短縮できる ・噛む力などを考慮した精密な診断と設計が必要
・治療費を抑えられる可能性がある ・長期的な安定性に関するデータはまだ蓄積途上である

⑤All-on-4(オールオンフォー)で多くの歯を一度に補う

All-on-4は、片顎の歯をすべて失ってしまった方や、多くの歯が抜けて総入れ歯に近い状態の方に適した治療法です。 失った歯の本数分のインプラントを埋め込むのではなく、最小4本(場合によっては6本)のインプラントで、片顎すべての人工歯を支えます。

この治療法の大きな特徴は、インプラントの埋め込み方にあります。 骨が比較的多く残っている部分(前歯のあたりなど)を選んで前方の2本を垂直に埋め込みます。 そして、奥歯側の2本を骨のある部分に向かって斜めに埋め込むのです。 これにより、骨が薄くなりがちな奥歯の部分でサイナスリフトなどの骨造成手術を避けられる可能性が高まります。

さらに、手術をしたその日のうちに、しっかりと固定された仮歯を装着できるのも大きな利点です。 食事や会話に困ることが少なく、審美性もすぐに回復できます。 少ないインプラントで多くの歯を支えるこの構造は、力学的な計算に基づいた歯科医療における設計技術の進歩の賜物です。

All-on-4が適しているケース
・片顎の歯をすべて、あるいはほとんど失っている
・総入れ歯のズレや痛み、味覚の低下に悩んでいる
・骨造成手術をできるだけ避けたい
・短期間で噛めるようになりたい
メリット デメリット
・手術当日から食事ができる(柔らかいものから) ・外科手術が必要
・骨造成が不要になる場合が多い ・毎日のセルフケアと定期的なプロのメンテナンスが非常に重要
・埋め込む本数が少ないため、費用を抑えられる可能性がある ・適用できる骨の状態が限られる

治療法ごとの期間と詳しい流れ

骨造成を伴うインプラント治療は、骨が作られ、インプラントと結合するまでに時間が必要です。 そのため、一般的なインプラント治療よりも期間が長くなる傾向があります。 治療の大まかな流れと期間を把握しておくことで、安心して治療に臨むことができます。

治療期間の目安

  • 骨造成とインプラント埋入を同時に行う場合
    • 約4ヶ月~7ヶ月
  • 先に骨造成のみを行い、骨の治癒を待つ場合
    • 約6ヶ月~1年
    • ※骨の状態や再生能力には個人差があるため、期間は前後します。

治療の詳しい流れ

  1. カウンセリング・精密検査(約1時間)
    • 歯科用CTなどを用いて顎の骨の量や厚み、神経や血管の位置を詳細に確認します。
    • 安全な治療のための、患者さん一人ひとりに合わせた治療計画を立案します。
  2. 骨造成・インプラント埋入手術(約1~3時間)
    • 骨の状態に応じて、骨造成手術とインプラントの埋め込みを同時に、あるいは別々に行います。
  3. 治癒期間(約3ヶ月~6ヶ月)
    • 骨とインプラントがしっかりと結合する(オッセオインテグレーション)のを待ちます。
    • この期間中は、仮歯を使用できる場合もあります。
  4. 上部構造(被せ物)の型取り(約30分)
    • インプラントが骨と結合したら、最終的な被せ物を作製するための型取りを行います。
    • この型取りの精度が、被せ物とインプラントの適合性を左右する重要な工程です。
  5. 上部構造の装着(約30分)
    • 完成した被せ物をインプラントに装着して、治療は完了です。
    • この際、被せ物と歯ぐきの境目が滑らかに移行し、清掃しやすい形態になっているかが重要です。
  6. メンテナンス
    • 治療後は、インプラントを長持ちさせるために定期的な検診とクリーニングが不可欠です。

手術に伴う痛みや腫れ、考えられるリスクと成功率

インプラント治療は外科手術を伴うため、痛みやリスクについて不安に感じる方も少なくありません。 事前に正しい情報を得ることで、過度な心配を和らげることができます。

手術に伴う痛みや腫れ

  • 手術中
    • 局所麻酔をしっかりと効かせてから行うため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。
  • 手術後
    • 麻酔が切れた後、痛みや腫れが出ることがあります。
    • 通常、痛みは処方される鎮痛剤でコントロールでき、2~3日をピークに1週間程度で徐々に落ち着きます。
    • 特に骨を増やす範囲が広い手術では、腫れや内出血が出やすい傾向があります。

考えられるリスク 頻度は低いものの、以下のようなリスクが考えられます。

  • 感染
    • 手術部位に細菌が感染し、炎症を起こすことがあります。
    • 徹底した衛生管理下で手術を行うことでリスクを低減します。
  • 神経の麻痺
    • 下顎の手術で、近くにある神経を傷つけると、唇などに麻痺が残ることがあります。
    • CTによる事前の精密な診断で神経の位置を正確に把握し、リスクを最小限に抑えます。
  • 骨と結合しない
    • まれにインプラントが骨と十分に結合せず、再手術が必要になる場合があります。

成功率について 一般的に、インプラント治療の10年生存率は90%以上と報告されています。 この高い成功率を支えているのは、骨との結合だけではありません。

治療の長期的な成功には、手術部位を精密に管理し、最終的な被せ物と歯ぐきの状態を良好に保つことが不可欠です。 患者様の快適性や安全性を確保しながら治療を進めるには、骨だけでなく歯ぐきのような軟らかい組織の管理を含めた、総合的な技術が求められます。

信頼できる歯科医院・医師の選び方とセカンドオピニオンの重要性

骨が足りない場合のインプラント治療は、歯科医師の知識と技術力に大きく左右される専門性の高い治療です。 そのため、慎重に歯科医院を選ぶことが、治療の成功に直結します。

信頼できる歯科医院・医師を選ぶためのチェックリスト 以下のポイントを参考に、ご自身が納得できる医院を見つけましょう。

  • ☐ 精密な診断設備(歯科用CTなど)があるか
    • 骨の状態を三次元的に正確に把握することは、安全な手術に不可欠です。
  • ☐ 骨造成や難症例インプラントの経験が豊富か
    • ウェブサイトなどで、これまでの症例数や実績を確認するのも一つの方法です。
  • ☐ 複数の治療選択肢を提案してくれるか
    • 骨造成だけでなく、ショートインプラントなど、あなたの状況に合わせた様々な選択肢のメリット・デメリットを説明してくれるかどうかも、医院選びのポイントの一つです。
  • ☐ 衛生管理が徹底されているか
    • 手術を行う環境として、滅菌対策などがきちんと行われているかを確認しましょう。
  • ☐ 治療後のメンテナンス体制が整っているか
    • インプラントを長持ちさせるには、治療後のサポートが非常に重要です。

セカンドオピニオンの重要性 一度「インプラントはできない」と断られたとしても、別の歯科医院では治療可能と判断されるケースは少なくありません。 治療方針や費用は医院によって異なるため、複数の専門家の意見を聞く「セカンドオピニオン」を積極的に活用しましょう。

治療の成功は、土台となる骨やインプラントだけでなく、見た目や長期的な安定性に関わる歯ぐきの管理など、手術部位全体の精密なコントロールに依存します。 複数の意見を比較検討することで、ご自身が信頼でき、安心して治療を任せられる医師を見つけることができます。

まとめ

今回は、骨が足りないと診断された場合のインプラント治療について詳しく解説しました。 諦めかけていた方も、様々な治療法があることを知り、希望が見えたのではないでしょうか。

「骨が足りない」と一度は診断されても、決して諦める必要はありません。 骨を増やす「骨造成」や、特殊なインプラントを用いることで、治療の道は開けます。 大切なのは、歯科用CTなどでご自身の状態を正確に把握し、豊富な選択肢の中からご自身に合った治療法を見つけることです。

治療方針や費用は、歯科医院によっても異なります。 一つの診断で諦めてしまう前に、セカンドオピニオンも積極的に活用しながら、まずは信頼できる専門医に相談することから始めてみませんか。

参考文献

  1. Liu Z, Zhang Q, Li Y, Wang G, Fu C, Sun Y and Ding J. “Biomaterial-based treatments for structural reconstruction in intervertebral disc degeneration.” Biomaterials 324, no. (2026): 123426.
  2. Chauhan R, Chauhan S, Padiyar N, Kaurani P, Gupta A and Khan FN. “Present status and future directions: Soft tissue management in prosthodontics.” World journal of methodology 15, no. 4 (2025): 104497.
  3. Naeem A, Yu C, Zhou L, Xie Y, Weng Y, Huang Y, Zhang M and Yang Q. “Shape memory hydrogels in tissue engineering: Recent advances and challenges.” Bioactive materials 54, no. (2025): 215-247.
  4. Wu Y, Liao J, Pu Y, Gong L, Liu X, Wu Y, Zhang Q, Gu F, Wang Y and Lin Z. “Mechanistic insights and therapeutic applications of metal-based nanomaterials in oral infectious diseases: Current advances and future perspectives.” Biomaterials 324, no. (2026): 123528.
  5. Alexander R and Liu X. “Soft tissue integration around dental implants: A pressing priority.” Biomaterials 324, no. (2026): 123491.

追加情報

[title]: Biomaterial-based treatments for structural reconstruction in intervertebral disc degeneration.

椎間板変性症に対する生体材料を用いた構造再建治療 【要約】

  • 椎間板変性症(IDD)は、腰痛、神経合併症、運動機能障害の主要な原因であり、患者の生活の質を著しく低下させ、公衆衛生システムにも大きな負担をかけている。
  • 現状の保存療法や手術療法では、変性進行の阻止や椎間板機能の回復には限界がある。
  • 生体材料を用いた治療法は、細胞消失、微小環境の悪化、構造的欠損といった病理学的メカニズムに働きかけ、疾患の進行を阻止し、再生を促進することを目指す有望な治療法である。
  • 本論文では、細胞補充、細胞外微小環境の調節、構造再建のための生体材料製剤の可能性を探っている。
  • 革新的な生体材料と病理学的特徴の相互作用に対処することで、IDDに対する再生療法を進歩させ、より効果的な治療法開発のための貴重な知見が得られる。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40472408

[quote_source]: Liu Z, Zhang Q, Li Y, Wang G, Fu C, Sun Y and Ding J. “Biomaterial-based treatments for structural reconstruction in intervertebral disc degeneration.” Biomaterials 324, no. (2026): 123426.

[title]: Present status and future directions: Soft tissue management in prosthodontics.

補綴処置における軟組織管理:現状と将来展望 【要約】

  • 補綴処置において、患者の快適性、安全性、術者のアクセスと視認性を確保するため、手術部位の完全な制御が不可欠である。
  • 固定義歯の成功は、支台歯の調整された縁辺部の正確な印象採得に依存する。
  • 固定修復体の長期的な予後を最適化するためには、修復物と調整された支台歯との間の辺縁不適合を減少させるために、歯肉退縮術を用いるべきである。
  • 支台歯の調整された縁辺部への修復物の正確な辺縁位置合わせは、治療的、予防的、審美的目的のために重要である。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40900871

[quote_source]: Chauhan R, Chauhan S, Padiyar N, Kaurani P, Gupta A and Khan FN. “Present status and future directions: Soft tissue management in prosthodontics.” World journal of methodology 15, no. 4 (2025): 104497.

[title]: Shape memory hydrogels in tissue engineering: Recent advances and challenges.

組織工学における形状記憶ハイドロゲル:最近の進歩と課題 【要約】

  • 形状記憶ハイドロゲル(SMHs)は、変形後にも元の形状を回復できる独自の能力を持つため、組織工学において革新的な材料として注目されている。
  • SMHsは親水性、弾性、形状記憶能力を兼ね備えており、様々な生体医用アプリケーションに最適である。
  • 本レビューでは、SMHsの革新的な設計と合成、ならびに機械的特性、生体適合性、生分解性など、組織工学に適した物理的および生物学的特性を明らかにしている。
  • SMHsは、骨再生、軟部組織再建、血管および神経組織工学など、組織工学において多様な用途を持つ。
  • さらに、スマートドラッグデリバリーシステムや3Dプリントによるカスタマイズされたインプラントの作製にも利用されている。
  • しかしながら、生産スケーラビリティ、機械的特性の最適化、形状回復と固定、制御された分解、長期安定性など、課題も残っている。
  • これらの課題を克服し、臨床応用可能性を高めるには、学際的なアプローチが不可欠である。
  • まとめとして、SMHsは複雑な生体医学的問題に対する革新的な解決策を提供し、再生医療の進歩と患者転帰の改善に役立つ貴重なツールである。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40895240

[quote_source]: Naeem A, Yu C, Zhou L, Xie Y, Weng Y, Huang Y, Zhang M and Yang Q. “Shape memory hydrogels in tissue engineering: Recent advances and challenges.” Bioactive materials 54, no. (2025): 215-247.

[title]: Mechanistic insights and therapeutic applications of metal-based nanomaterials in oral infectious diseases: Current advances and future perspectives.

金属系ナノ材料による口腔感染症治療:メカニズムと臨床応用 【要約】

  • 口腔感染症(う蝕、歯髄炎、歯周炎、インプラント周囲炎、顎骨骨髄炎など)は、細菌感染が主な原因で、非常に頻度の高い疾患である。
  • 従来の治療法(機械的デブリードマン、抗菌薬療法)は、耐性菌の出現、不十分な感染制御、組織再生促進能力の不足といった限界がある。
  • 金属系ナノ材料は、広範囲の抗菌作用、免疫調節作用、再生促進作用を示すため、これらの課題解決に有効な手段として期待されている。
  • 本論文は、金属系ナノ材料の抗菌メカニズム(細胞膜破壊、酸化ストレス誘導、代謝干渉など)と、炎症調節、組織再生促進(幹細胞分化、細胞外マトリックスリモデリングなど)における役割を詳細に分析している。
  • う蝕予防、歯内療法、歯周治療、インプラント治療におけるこれらのナノ材料の応用についても検証している。
  • バイオセーフティ、臨床応用における課題、材料最適化戦略についても言及している。
  • 本レビューは、最近の進歩と今後のトレンドをまとめることで、革新的なナノ治療薬の開発による口腔医療の向上への洞察を提供することを目的としている。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40587916

[quote_source]: Wu Y, Liao J, Pu Y, Gong L, Liu X, Wu Y, Zhang Q, Gu F, Wang Y and Lin Z. “Mechanistic insights and therapeutic applications of metal-based nanomaterials in oral infectious diseases: Current advances and future perspectives.” Biomaterials 324, no. (2026): 123528.

[title]: Soft tissue integration around dental implants: A pressing priority.

歯周組織インプラント周囲の軟組織統合:喫緊の課題 【要約】

  • 歯槽骨との結合(オッセオインテグレーション)に加え、長期的なインプラント成功には、強靭で生物学的に統合された軟組織シール(歯肉など)の形成が非常に重要であることが、最近の研究で強調されている。
  • 本論文では、インプラント周囲の軟組織統合を促進するための分子、細胞、材料科学戦略に関する最近の進歩(主に過去5年間)を批判的に検討している。
  • 重要な要素として、マイクロおよびナノスケールレベルでの精密に設計された表面構造、濡れ性とタンパク質吸着を向上させる表面化学修飾、細胞外マトリックス由来ペプチド、ケモカイン、成長因子を含む生体模倣コーティングが挙げられる。
  • レーザーマイクロ・ナノテクスチャリング、プラズマ処理、生体機能化による線維芽細胞と上皮細胞の挙動調節、組織付着の促進、初期炎症反応の軽減に関する最近の研究結果が示されている。
  • プラットフォームスイッチングや粘膜透過性ジルコニアアバットメントなどの新しいインプラント・アバットメント設計は、軟組織の安定性を向上させ、骨頂部骨吸収を軽減する。
  • 次世代材料の免疫調節の可能性は、マクロファージの分極を制御し、創傷治癒を促進する有望な手段を提供する。
  • 本レビューは、安定した軟組織界面を設計するための材料駆動型および生物学的戦略に関する最新の証拠を総合的に示し、歯科インプラントにおける重要な未充足ニーズに対処する、長期的な軟組織の健康に最適化されたインプラントシステムの開発のためのトランスレーショナルロードマップを提供している。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40505390

[quote_source]: Alexander R and Liu X. “Soft tissue integration around dental implants: A pressing priority.” Biomaterials 324, no. (2026): 123491.